ポトマック河畔の桜並木、米国ワシントンDC 外務省の桜並木が、東京の春の名所のひとつになって久しい。これは東独、ポルトガルなどの大使を務めた谷盛規氏が、昭和30年代末に官房の会計課長だった時、思い立って、植えたものと聞いた。谷氏は、この仕事にたいへん打ち込んで、自ら千葉や埼玉の造園業者に足を運び、苗木を選んだということである。そういう仕事ぶりが必ずしも尊ばれない官僚組織の中では異色の存在だったらしい。私もこの話をかつて聞いたとき、なぜ桜の植樹にそこまでと感じた。しかし、思えば当時の多くのことがすでに歴史のかなたに霞んだ今日、桜は、毎年見事に咲き続けている。私もずっと後に同じ会計課長の職についたが、あれやこれやで走りまわり、とてもあのような仕事は残せなかった。もっとも桜に打ち込んだ外交官は、実は谷氏だけではない。 東京からワシントンに桜が贈られて、ちょうど100年になる。ポトマック河畔を美し