数ヶ月ほど前から、バタコは新しい顔を投げるとき指を1センチほど食い込ませるようになった。傷ついた箇所が偏頭痛みたいにずきずきと痛み続けてアンパンマンを悩ませるのだった。 「やめるんだ ばいきんまん!」 そうした大声を出すと痛みが増す。大きな頭だから指を挿した方が投げやすいのだろうと想像はできても、これでは生活がままならない。アンパンマンはこの窮状を知ってほしいと思った。 「バタコさん 指のあとが いたむんだ」 「知ってるわよ」 バタコは知っていた。知りながらそうしていた。自分の都合のために他人の苦しみを顧みない女。アンパンマンは別に驚かない。ただそうした性質を知っていたはずなのに、忘れていた自分に失望しただけだった。 バタコはしばらく不機嫌さをあらわにして過ごし、パン工場のみんなを滅入らせた。パンのこと一番詳しい私が知らないと思ってるなんて、馬鹿にしてるわ、と言いたげな態度だった。 こんな