■ 時事解説:アフリカゾウによる農作物被害とその対策――農民による命がけの追い払い―― ■ 岩井 雪乃 ■ 『アフリカレポート』2018年 No.56、pp.93-99 (画像をクリックするとPDFをダウンロードします) はじめに アフリカゾウ(Loxodonta Africana)が人間に害をおよぼす問題は、human-elephant conflictと呼ばれ、ゾウが生息するアフリカの国の多くで古くから起こってきた。主な被害は作物を食い荒らされてしまう農作物被害だが、時には人間が殺傷される人身被害も発生する。被害の程度や増減の傾向は、国や地域によって異なっているが、タンザニアのセレンゲティ国立公園(Serengeti National Park)に隣接するセレンゲティ県(Serengeti District)では、2000年代に入ってから、ゾウによる被害(以下、ゾウ被害)が増加の一途を