50年前の伊勢湾台風を思い起こさせるコースでの襲来だった。東海地方から東北地方にかけて本州を縦断した台風18号である。しかも、この10年間で最強クラスの台風だった。 茨城県と千葉県では、台風に伴う竜巻とみられる突風で、多くの家が壊れるなどしたが、最大風速の猛烈さや強風域の広がりの割に、被害が拡大しなかったのは、幸運だった。 5000人余の命を奪った伊勢湾台風の時代に比べ、台風進路の予報精度は飛躍的に向上した。気象衛星のほか、スーパーコンピューターでの数値予報も行われている。建物は木造からビルに変わり、都市化も進んだ。 だが、こうした近代化によって台風や洪水への防災力が大幅に増したと考えるのは早計だ。都市は規模や機能が拡大し、高度化するにつれて自然災害に対する脆弱(ぜいじゃく)性を持ち始めるからである。 今回の台風18号では、その弱点が首都圏などでの交通ネットワークの乱れとなって表れた。安全