日本における機関リポジトリの展開 :学術情報流通と蓄積の変容 1. 学術情報流通の変貌 1990年代後半から学術情報流通はインターネットを基盤として展開している。学術雑誌はSTM(科学技術医学分野)を中心にその多くは電子ジャーナルとなった。 1970年代から続いた雑誌価格の高騰は円高等の要因により,日本への影響は諸外国より遅れて現れた。1990年頃からその影響は顕著になり,予算の制約から冊子体の購読を打ち切る図書館が増え,日本国内でアクセスできる学術雑誌数は急減した。これは購読料の値上がり→購読数の減少→さらなる購読料の値上がりといったいわゆる「雑誌の危機(シリアルズクライシス; CA1543参照)」の日本版であった。 2000年以降,電子ジャーナルとそのビッグディール契約が普及した結果,国内の学術情報アクセス状況はかなり改善された。アクセスできる電子ジャーナルタイトル数が増加し,学術情