要点「キャンセルカルチャー」の起源を、人類学の「処刑仮説」から考える。 危害恐怖とフェミニズム 個人的な話にはなるが、私の知り合いに、二次元美少女ものが好きなオタクがいる。同時にかれはオンライン上のフェミニストの振る舞いにもしばしば賛意を示し、このためいつの間にやら、厄介な立場に置かれるようになった。フェミニストによる「女性」表象批判と、それに対するオタクの反批判が激化する2010年代以降の激動において、しばしば板挟みに遭うようになってしまったのだ。 一度かれに、「どうしてフェミニズム寄りなのか。立場をどっちかに振り切らないと、苦しくないか」と尋ねた事がある。帰ってきた答えが、私には意外だった。いわく、「自分は誰かにうっかり危害を加えてしまうかもしれない、という不安や恐怖が強い。だからフェミニストが二次元イラストに対してする『女性に対する加害だ』との非難には、強い恐怖を感じて従ってしまう」