→紀伊國屋書店で購入 「モードとしてのスローモーション」 本サイトでも執筆されている阿部公彦(あべ・まさひこ)さんによる単著である。本書は、「ゆっくり」に秘められる意味を現代文化のなかでとらえようという大きな構想力に基づいている。そのためのキー概念となるのが「スローモーション」と「残像」という表現方法であり、そこからマンガ、絵画、ダンス、野球、小説、詩などの諸ジャンルが検討されていく。 近代的な価値観、近代資本主義の産物としての「速度」はよく論じられる。また、それとの対比、あるいは批判としてスローライフ、スローフードなどの「ゆっくり」文化が論じられることもある。ただし、本書はこれらのようにイデオロギー的な意味合いで「ゆっくり」文化を称揚するものではない。それよりは、表象としての「スローモーション」を解き明かし、そのなかにある意味を丹念に検討しようとするものである。 著者は、第1章の冒頭で「