『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)は、谷崎潤一郎の古典回帰時代の随想的評論[1]。 日本文化と西洋文化の不調和を嘆き、それでも成される欧米化に対する「損」の意識をあらわにしている。まだ電灯がなかった時代の今日と違った日本の美の感覚、生活と自然とが一体化し、真に風雅の骨髄を知っていた日本人の芸術的な感性[注釈 1]について論じ、東西の文化比較、芸能や生活における陰翳の美との関係などを通し、失われつつある陰翳への礼賛を文学で実践したいと表明した[1][2][3]。 概要[編集] 西洋の文化では可能な限り部屋の隅々まで明るくし、陰翳を消す事に執着したが、いにしえの日本ではむしろ陰翳を認め、それを利用することで陰翳の中でこそ映える芸術を作り上げたのであり、それこそが日本古来の美意識・美学の特徴だと主張する。こうした主張のもと、建築、照明、紙、食器、食べ物、化粧、能や歌舞伎の衣装の色彩など、多岐にわた