タグ

ブックマーク / lib.ruralnet.or.jp (23)

  • No.384 紙巻きタバコの微量元素の健康影響 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    No.384 紙巻きタバコの微量元素の健康影響 ●はじめに 2018年に「健康増進法」が改正されて,受動喫煙を防ぐために喫煙が制約されるようになったこともあり,日でもタバコの喫煙者が激減してきている。そして,タバコの葉のない電子式タバコや,タバコの葉があるものの,燃焼させずに加温する加熱式タバコが使用されるケースが増えてきている。 タバコの害作用として,がん,虚血性心疾患(狭心症,心筋梗塞),慢性閉塞性肺疾患(肺気腫,慢性気管支炎)などが指摘されている。その主因は, 有機の有毒物質や一酸化炭素による。これら以外にもタバコの微量元素の重金属もあるが,その害作用はあまり知られていない。 少し古い文献だが,順天堂大学医学部の千葉百子助教授(当時,現在客員教授)の文献と,イタリア人でWHO(世界保健機関)のコーディネーターだったMasironiとの共著による下記文献が,タバコの微量元素の害作用に

    Rion778
    Rion778 2022/05/12
    “紙巻きタバコのCd濃度は0.5~3.5μg/gの範囲で,平均レベルは1.7μg/gと非常に高い。これは,タバコ植物体が土壌からCdを吸収して,葉に通常の植物よりは高い濃度(0.77~7.02μg/g)で蓄積する特殊な能力を有しているから”
  • No. 383 イギリスに定着しているミミズを捕食する外来性プラナリア | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ニュージーランド原産のミミズ捕性プラナリアが,アイルランド共和国,北アイルランドを含むイギリスなどに定着しており,外来性有害動物として関心を集めている。この動物の問題を下記文献から紹介する。 R.J.C. Cannon, R.H.A. Baker, M.C. Taylor and J.P. Moore: A review of the status of the New Zealand flatworm in the UK. Annals of Applied Biology (1999) 135: 597-614. 注)イギリスは,グレート・ブリテン(イングランド,ウェールズ,スコットランド)と北アイルランドからなる。北アイルランドの南にアイルランド共和国が存在。 なお,プラナリアの画像は下記を参照されたい。 (プラナリアの写真) ●プラナリア プラナリアは理科の実験で,1つの個体をカ

    Rion778
    Rion778 2022/04/18
  • No.380 世界中の農業を有機農業に転換するには食餌の変更が必要 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●有機農業に対する半世紀前の評価 1974年のアメリカ科学振興協会(AAAS:雑誌 Science の発行元)の年次総会で,パネリストは、有機農業に対して次のように評価した。 有機農業は科学的にナンセンスで,糧について流行を追いかける変人の領域であって,大衆を混乱させ驚かせて糧費用を余計に払わせる偽科学と評価した(W. Lockeretz What Explains the Rise of Organic Farming? in Edited by W. Lockeretz. ORGANIC FARMING: An International History. CAB International 2007.)。 しかし,その後,化学肥料や化学合成農薬に依存した農業の集約化が一段と進展し,化学資材による水質汚染,化学合成農薬の作物残留,化学肥料による作物体の硝酸塩濃度の上昇などによって,

    Rion778
    Rion778 2022/01/17
  • No.374 有機と慣行の食品で栄養品質に有意差がない〜イタリアの研究の誤り | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●有機と慣行のプリパック品の栄養調査 これまでにも多くの研究が有機と慣行の品の栄養成分の比較を行なっている。初期の段階では,栄養成分量を微量栄養成分も含めてきちんと定量した研究が少なかったので,環境保全型農業レポート「No.137 有機と慣行の農畜産物の栄養物含量に差はない」に紹介したように,両者の間には有意差がないとされた。しかし,その後,両者の栄養成分を比較した研究が増えて,環境保全型農業レポート「No.281 有機と慣行の作物で,抗酸化物質,カドミウム,残留農薬含量に有意差を確認」という結論がイギリスのバランスキーらによって出された。 では,野菜,果実や穀物のような一次生産物ではなく,一次生産物を調理などの加工を行なって包装して販売している,朝シリアル,パン,酪農製品などの品(プリパック品)では,有機と慣行の栄養品質の違いがあるかどうか。この問題についての研究は世界的に少な

    Rion778
    Rion778 2021/07/20
    “いくつかの領域での観察研究によって有意なプラス結果が示されているものの,現在の証拠の基盤は短期的な研究であり,有機の食餌摂取の長期的便益について明確な意見を言えるものではない。”
  • No.373 ナノ農薬の概要 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 環境保全型農業レポート「No.372 ナノ肥料の概要」でナノサイズの肥料の概要を紹介した。今回は,農業分野で,最近ナノ肥料と同様に活発に開発研究が行なわれている,ナノ農薬の概要を下記の文献をベースにして紹介する。 E.A. Worrall, A. Hamid, K.T. Mody, N. Mitter and H. Pappu (2018) Nanotechnology for Plant Disease Management. Agronomy 8(12):285. 24pp. ●ナノ農薬とは何か ナノ農薬は,10から100ナノメートルの範囲の大きさに剤形した農薬機能をもったナノ粒子であるが,次の2つのタイプが存在する。 (注)ナノメートルは,10億分の1メートル(10-9m=100万分の1ミリメートル:10-6mm) 農薬機能を有する物質のナノ粒子(農薬機能を持たない添加物

    Rion778
    Rion778 2021/06/15
  • No.372 ナノ肥料の概要 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●ナノテクノロジーとは何か 「ナノ肥料」の「ナノ」とは長さ,重さ,時間,力などの国際単位系における基礎となる単位の10-9倍(=十億分の一)の量であることを示す接頭辞である。ナノメートルは,10億分の1メートル(10-9m=100万分の1ミリメートル:10-6mm)のことである。 アメリカの環境保護庁EPAは,医薬品工業,電子工業,化学工業など様々な分野でナノテクノロジーが利用・実用化されている現状を踏まえて,ナノテクノロジーを次のように定義している。 『ナノテクノロジーは,三次元(縦,横,奥行き)のどの長さも,約1から100ナノメートル長さの範囲にある原子,分子または高分子のレベルでの研究や技術開発で,小さい大きさゆえに有している性質や機能を有する構造,装置やシステムを創出や利用したり,原子のスケールで物体を制御や操作したりすることである。』としている。そして,『ナノテクノロジーは化学的

    Rion778
    Rion778 2021/05/21
  • No. 370 化学肥料施用量増加禁止の法律が中国農業に及ぼす影響 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 中国の多くの農家の経営面積は狭隘で,そのなかで農業生産量を増やして所得や料自給率を向上させる最も安価な方法は,化学肥料や化学合成農薬の施用量の増加である。日もまさに同様であり,化学資材の施用量増加を軸にして収量増加を実現して,農家所得を向上させてきた。ただし,日では農地の総面積が少ないゆえに,高度経済成長で増大した料需要を国内で満たすことができず,輸入料を増加させて料自給率を維持することができなかった。 環境保全型農業レポート「No.350 中国農業の環境パフォーマンス:その現状と課題」に紹介したように,施用量があまりにも余剰になりすぎた化学肥料の施用について,中国は2015年に「2020年までに化学肥料使用量のゼロ増加を達成する法律」(以下,「化学肥料使用量増加ゼロの法律」と呼ぶ)と,化学合成農薬について,「2020年までに農薬使用量のゼロ増加を達成する法律」を成

    Rion778
    Rion778 2021/03/25
  • No. 369 有機農業助長策としてのグリーン公共調達の効果 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●グリーン公共調達 環境にやさしい商品やサービスの普及を助長する方策の1つとして,中央や地方の政府の公共機関が,環境にやさしい商品やサービスを調達することによって,その生産と消費を促進する政策が “グリーン公共調達” Green Public Procurement (GPP)と呼ばれている。グリーン公共調達は,そうでなければ非グリーン代替物が購入されることになるのに比べて,環境インパクトのより少ない,商品,サービスや労働を購入すべく,公的当局が努力するグリーンな購買プロセスと理解することができる。 OECD(経済協力開発機構)は2002年にグリーン公共調達について勧告を採用し,それ以降,OECD以外の国を含めて多くの国々がグリーン公共調達に着手している。日もそうした国の1つとされており,2000年に「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法,2000年法律第10

    Rion778
    Rion778 2021/02/26
    “有機食料調達率が年間1%高まると,カウンティの有機農地の面積割合が年に約0.4〜0.6%,面積にすると72〜108ha増加”
  • No. 368 COVID-19の流行による世界の二酸化炭素発生量の減少 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    環境保全型農業レポート「No.360 OECDが料・農業分野におけるCOVID-19問題を集約」に,OECDがまとめた新型コロナウイルス感染症COVID-19のパンデミック(世界的流行)の農業に対する影響を紹介した。それに続き,COVID-19の流行による世界の二酸化炭素(以下CO2と表記)発生量に及ぼす影響を下記の文献をベースにして紹介する。(C.Le Quéré, R.B.Jackson, M.W.Jones, A.J.P.Smith, S.Abernethy, R.M.Andrew, A.J.De-Gol1, D.R.Willis, Y.Shan, J.G.Canadell, P.Friedlingstein, F.Creutzig and G.Peters(July 2020) Temporary reduction in daily global CO2 emissions d

    Rion778
    Rion778 2021/01/25
    “4月末までの化石燃料からの世界のCO2排出の総変化量は-1,048(-543〜1,638)CO2100万トンと推計され,2019年1月から4月の‐8.6%減少に相当”
  • No.363 保全耕耘は土壌侵食を減らすが水質汚染を助長しやすい | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 環境保全型農業レポート「No.168 アメリカで不耕起栽培が拡大中」に紹介したように,土壌侵が深刻なアメリカでは,侵を軽減するために耕起回数を減らして,作物残渣を土壌表面に放置するミニマム・ティレッジや保全ティレッジが広く使用されるようになっている。No.168でティレッジを耕起と訳したが,通常,耕起はplow,耕耘はplow + harrowing(砕土)の意味なので,号ではティレッジを「耕耘(こううん)」と訳すことに修正する。 ●溝切耕耘(strip till) 溝切耕耘は,今回紹介する論文でも中心にしている保全耕耘方法である。これはNo.168に紹介したが,次のような方法である。 播種の前または播種作業と同時に,ナイフ様装置を使って,土壌に切り込みを入れて作った残渣のない溝(幅15cmまたは畦幅の1/3程度,深さ10〜20cm)を作る耕起方法である。溝切り時に,溝中

  • No.273 植物の無機栄養説と最小律の発見者はリービッヒではなかった:その2 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●三沢嶽郎論文 環境保全型農業レポート「No.270 植物の無機栄養説と最小律の発見者はリービッヒではなかった」の内容に関して,読者から,下記の三沢嶽郎論文の存在をご指摘頂いた。 当該論文は,リービッヒに関係する多数のドイツ語の文献を丁寧に読んで見事に整理してある。そして,No.270に記した,リービッヒの,シュプレンゲルの研究を無視した科学倫理に欠けた強引な態度を,いち早く指摘していた。また,吉田武彦氏がリービッヒの「化学の農業及び生理学への応用」の翻訳を解説した部分で,「無機栄養説の先駆者とみなされたSPRENGEL」と記しているのは,何に基づいたのかとNo.270に記したが,それが当該論文であろうと指摘頂いた。 三沢嶽郎 (1951) リービッヒの思想とその農業経営史上における意義.農業技術研究所報告.H經營土地利用.2: 1-26. 筆者は,三沢嶽郎氏を存じ上げないが,農林省の旧農

    Rion778
    Rion778 2020/08/04
    “リービッヒの強引なやり方で無機栄養説が普及して化学肥料が使用され,世界の食料生産が飛躍的に向上した。しかし,だからといって,リービッヒの農業のあり方に関する主張が全て正しかったとはいえない。”
  • No.270 植物の無機栄養説と最小律の発見者はリービッヒではなかった | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 植物の無機栄養(植物が基的に無機養分だけを吸収して生育できる)と,最小律(植物の生長は必要な養分のうちの最も少ないものによって制限される)は,ドイツの科学者のリービッヒによって発見・定式化されたと一般にいわれている。しかし,それが誤りであることを記した下記論文が,アメリカ土壌学会雑誌に掲載されていた。 van der Ploeg, R.R., W. Böhm and M. B. Kirkham (1999) On the origin of the theory of mineral nutrition of plants and the law of the minimum. Soil Science Society of America Journal 63: 1055-1062. 3人の著者はそれぞれ,ドイツのハノーバー大学の土壌学研究所,ゲッチンゲン大学の農学・植物育

    Rion778
    Rion778 2020/08/04
    “リービッヒは「彼の本が(1842年に)刊行されるよりもはるかに前に,シュプレンゲルが,リービッヒ自身がその後に明確に示したものとほぼ同じ腐植と無機肥料についての意見を公表していたことを無視した」”
  • No.362 日本の有機農業関係法律の問題点 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 環境保全型農業レポートは,これまでに国内外の有機農業に関する情報を少なからず紹介してきている。それらを踏まえて,欧米と日の有機農業に関する法律の違いを要約しておく。 ●有機農業に対する,EUとアメリカの法的姿勢の違い 有機農業に関する法律が国際的に単一である必要はなく,国によって違いがあって当然である。例えば,EUとアメリカでは有機農業に対して次の違いがある(環境保全型農業レポート「No.24 有機農業に対する政府の取組姿勢」)。 (1) EUの基的姿勢 EUは,有機農業は環境汚染の軽減,生物多様性の向上,農村景観の保全などの重要な便益(多面的機能)を社会に提供しているが,農業者はこうした社会的便益を意識しておらず,その提供に対して対価も受け取っていない。そこで,慣行農業に比べて収量の低い有機農業に転換したり,実施したりすることによって生じた収益減を補償し,社会的便益に対す

  • No.359 マイクロプラスチックの土壌および作物生育に及ぼす影響 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに プラスチックフィルムやマイクロプラスチックが海洋動物の生活を脅かしているケースなどが,世界的な環境問題として話題になっている。農業では,ハウスの被覆,マルチ資材や肥料袋などとして使用されたプラスチックフィルムや容器などが土壌表面に廃棄されて,景観を損なったり,風で飛ばされて電線にからまったりなどして,問題を起こしている。しかし,農業で意外に問題視されていないのが,土壌に混入した5 mm未満のマイクロプラスチックの,土壌や作物に対する影響である。この点について,下記の論文が最近の研究結果を報告している。その概要を報告する。 文献1  A.A. de Souza Machado, C.W. Lau, W. Kloas, J. Bergmann, J.B. Bachelier, E. Faltin, R. Becker, A.S. Görlich and M.C. Rillig (2

    Rion778
    Rion778 2020/05/08
    タマネギを用いた実験で、マイクロプラスチックは生育を促進する場合が多いという話。付着する原料物質が窒素を含み施肥効果を生じさせたとの考察。生育促進=ポジティブとは言えないが面白い話だ。
  • No.355 有機作物生産は慣行農業より収益性が高い | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●はじめに 有機農業による作物単収は慣行農業よりも低く,そのため,有機農業は慣行農業よりも収益が少ないと思われがちだが,実は,有機農産物の価格プレミアムによって,慣行農業よりも高い収益性を上げている。そのことをまとめた下記の研究を紹介する。 D.W. Crowdera and J. Reganoldb (2015) Financial competitiveness of organic agriculture on a global scale. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 112: 7611-7616, および上記の補足情報 D.W. Crowdera and J. Reganoldb (2015) Supporting Information. 9pp.

    Rion778
    Rion778 2020/01/13
    “日本の有機農業のように,世界的にみれば極端に小規模な経営体でも成立するか,経営面積別の収益が実際にどれほどかなどかなどは疑問である。"
  • No.350 中国農業の環境パフォーマンス:その現状と課題 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ● はじめに 中国農業の歴史,現状や課題に関する著述は多いが,中国農業の環境パフォーマンスの状況と課題を簡潔にまとめた著述が少ない。その1つとして,下記がある。 OECD (2018) Innovation, Agricultural Productivity and Sustainability in China, OECD Food and Agricultural Reviews, 190pp. OECD Publishing, Paris. 書は,OECD貿易・農業局エコノミストの木村伸吾(OECD以前は農林水産省に在籍)と,Guillaume Gruéreの両氏が中心になって執筆したものである。その「第2章 中国料および農業の状況の概要」を中心にして,中国の農業とその環境パフォーマンスの現状と課題を紹介する。 ● 中国農村の土地請負制度 中国における農地の所有権や農業経営権

    Rion778
    Rion778 2019/08/18
    “上が決めた目標数値を農業者は守れ,そのための下に代償となる金を支給するなど毛頭考えないという,上意下達の発想だけで,目的が達成できるとは考えにくい。”
  • No.327 2000年の間に水田土壌はどう変化するのか | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ●土壌の年代系列 日に水田稲作が渡来してから,3000年を超える時代が経過している。水田土壌は,人間の営農行為によって,作土の下に耕盤(鋤床)を形成して透水性を低下させた上で,湛水によって土壌を還元させて,とときどき短期間排水を行ないながら,人為的に創られた土壌である。 水稲の連作は可能なので,2000年間継続栽培されている水田が日に現存していても良さそうなものだが,実際はそれほど古い水田は現存していないようである。そこで,水田土壌の長期にわたる動態を論ずるときは,研究では通常,長くても数10年にわたる圃場試験を行なって,その結果からシミュレーションモデルを作成して,100年程度後までの物質変化を予測しているのが通常である。 しかし,文献的に造成の記録が残されている歴史の古い水田が存在する。 日では,2000年前というわけにはいかないが,岡山県の瀬戸内海沿岸で1583年に宇喜多秀家に

  • No.328 EUの有機農業規則改正の動きが新展開 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ・これまでの経過 有機農業の規則を有機農業の理念に照らして厳格に規定して厳密に運用するほど,生産が難しくなる。結果として生産量が少なく,生産コストは上昇し,量と価格の両面で消費者の需要に応えることができなくなる。そこで,有機農業理念から逸脱はやむを得ないとして,特例措置を認めることになる。しかし,特例措置が多いほど生産・加工・流通のコストが下がりはするものの,一方で消費者の信頼が低下しやすい。このため,特例措置をどこまで認めるかは,各国とも,消費者の購買力と生産・加工・流通業者の技術力などの要因のバランスを考慮して,現実的に行なっている。 消費者の購買力水準が高いEUでは,有機生産物に対する消費者の需要がますます高まり,世界でも最も購入額が多く,域内での有機農業の拡大が望まれている。そして,EUでは購入力が高く,有機農業の経験年数の高い生産者が増えてきた国々では,例外措置をできるだけ減らし

  • No.312 有機作物の品質目安としての低硝酸・高ビタミンCの可能性 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    ・有機栽培作物は必ず高品質か 有機栽培作物は,化学合成農薬や抗生物質を原則として使用していない点で,残留農薬や抗生物質耐性菌の不安が少なく,慣行栽培作物よりも品質的に優れている(環境保全型農業レポート「No.240 アメリカ小児科学会の有機品に対する見解」参照)。 有機農業が1920年代に創設された当時のドイツでは,都市化と工業化に反対し,ベジタリアンの事,自給自足,天然薬品,市民農園,屋外での肉体活動,あらゆる種類の自然保全を理想とする「生活改善運動」が始まっていた。これがドイツ語圏での有機農業の先駆的動きの1つとなった。こうした動きの上に,1924年にシュタイナーが農業講座を開催し,これが有機農業運動の契機となった。 当時,科学的な植物栄養学はまだ確立されておらず,植物は土壌の腐植を栄養源としており,腐植を含まない無機物だけで植物が健全に育つはずがなく,有機物を施用して土壌肥沃度を

    No.312 有機作物の品質目安としての低硝酸・高ビタミンCの可能性 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート
  • No.211 有機と慣行農業による収量差をもたらしている要因 | 西尾道徳の環境保全型農業レポート

    はじめに 有機農業による作物収量は,慣行農業に比べて,通常20%前後低いことが広く知られている。しかし,有機対慣行の収量差はグローバルな視点ではどうであろうか,収量差をもたらしている要因は何であろうか。 この問題について,カナダとアメリカの研究者が,世界の62か所で,34の作物種についてなされた既往の66の研究論文から収集した,316事例の有機対慣行の収量比較のデータを用いて解析を行なった下記の論文が公表された。その概要を紹介する。 V. Seufert, N. Ramankutty1 and J. A. Foley (10 May 2012) Comparing the yields of organic and conventional agriculture. Nature 485: 229-232 (電子版には膨大な補足資料が添付されている) 解析方法 上記論文と類似した解析は以前

    Rion778
    Rion778 2017/06/02
    慣行の8割いけるんなら儲かりそうだ…