植物はなぜ植物なのか。動物と何が違うのか、分かりますか? 動物は移動することができて、植物には移動する手段がない、という一つの定義に異を唱える人は少ないかと思います。我々動物から見ると、「植物さんは動くことができずに気の毒だな、動けないとはなんて不自由で健気な存在なのだろう」と考えてしまいがちです。普段植物の生育に接している農業者や菜園愛好家であっても、考えることすらないかもしれません。 私も明確にその一人でありました。この本に出会うまでは。 高度な内容を専門外の人にもおもしろく 「植物の体の中では何が起こっているのか」の著者嶋田幸久(しまだ・ゆきひさ)さんは、京都大学理学部卒、東京大学大学院博士課程修了(理学博士)後、理化学研究所のチームリーダーを経るなど、植物生理学の最先端に在る人物と言って申し分ない経歴の持ち主です。 さて、私のような文系出身の農業者からすると、この経歴のまばゆさに圧