ブックマーク / www.kyoto-u.ac.jp (402)

  • 大地震発生直前に観察される電離層異常発生の物理メカニズムを発見―地殻破壊時に粘土質内の水が超臨界状態となることが鍵―

    梅野健 情報学研究科教授、水野彰 同研究員、高明慧 同専門業務職員(研究当時)らの研究グループは、大地震発生直前に観察される電磁気学的異常を地殻破壊時の粘土質内の水が超臨界状態であることにより説明する物理メカニズムを発見しました。今まで、2011年東北沖地震、2016年熊地震などの大地震発生直前に震源付近の電離層上空に異常が観測されたことが報告されていましたが、なぜ大地震発生直前の電離層に異常が生じるかを明確に説明する物理モデルの報告はなく、幾つかの仮説が提唱されているのみでした。 研究グループは、プレート境界面には、すべりやすいスメクタイトなどの粘土質が存在し、その粘土質の中にある水が地震発生前の高温高圧下で超臨界状態となり、電気的な性質が通常の水と異なり絶縁性となり、電気的特性が急に変化することで電磁気学的異常が生成することを初めて提案し、電離層への影響を大気の静電容量によりモデル

    大地震発生直前に観察される電離層異常発生の物理メカニズムを発見―地殻破壊時に粘土質内の水が超臨界状態となることが鍵―
  • 植物病害そうか病原因菌Streptomyces scabieiに対する抗菌物質の発見―そうか病をターゲットとした新規農薬の開発に期待―

    掛谷秀昭 薬学研究科教授、金子賢介 同特定研究員 (研究当時)、三枝毬花 同修士課程学生(研究当時)らの研究グループは、植物病害そうか病原因菌Streptomyces scabieiに対して強い抗菌作用を示す微生物代謝産物ツメセナミドC (Tum C)を見出し、そうか病に対する農薬シーズとしての有望性を明らかにしました。 そうか病は、主として放線菌の一種Streptomyces scabieiによって発症する植物病害です。ジャガイモ、大根、ニンジン、カブなど主要な根菜類の根塊で発症し、病斑によって作物の商品価値を著しく低下させる深刻な植物病害ですが、選択性や安全性に優れた抗菌剤など有効な防除策が少ないといった問題を抱えています。 研究では、同研究グループによって単離・構造決定、および全合成が達成された天然物Tum Cが、そうか病原因菌S. scabieiに対して顕著な抗菌活性を示すことを

    植物病害そうか病原因菌Streptomyces scabieiに対する抗菌物質の発見―そうか病をターゲットとした新規農薬の開発に期待―
  • 植物の生育状態を野外で早期診断できる装置を開発〜ストレスに応答して生じるmiRNAを葉から検出〜

    野田口理孝 理学研究科教授 (兼:名古屋大学特任教授)、川勝弥一 名古屋大学研究員、岡田龍 同研究員、原光生 同助教、有馬彰秀 同特任講師らの研究グループは、植物の生体分子であるmicro-RNA (miRNA)を簡易検出することで、生育状態を個別診断できるマイクロ流体デバイスを開発しました。 植物は環境変化に対して様々な生体分子を発現することで、ストレスに適応しています。研究グループは、植物がストレスへの初期応答で発現する生体分子を検出することで、生育状態の早期診断が可能であると考えました。研究では、生体分子の一つであるmiRNAを簡易検出するマイクロ流体デバイスを開発し、それを用いてトマト栄養状態を診断することに成功しました。開発したデバイスは、植物の搾汁液をデバイスに導入することで、標的となるmiRNAを検出することができます。技術を用いて、土壌の栄養素であるリンが欠乏した際

    植物の生育状態を野外で早期診断できる装置を開発〜ストレスに応答して生じるmiRNAを葉から検出〜
    agrisearch
    agrisearch 2024/04/05
    「本技術を用いて、土壌の栄養素であるリンが欠乏した際に発現するmiRNAであるmiR399の検出を行なった結果、リン欠乏条件で生育したトマトから強いシグナルが検出され、リン欠乏状態であると診断できました」
  • 脊椎動物らしさをつくる細胞群の進化的起源―脊椎動物にもっとも近縁なホヤから探る―

    私たちヒトを含む脊椎動物は、脳や目・鼻などの感覚器官が集中した「頭部(あたま)」と肛門より後方に位置する「尾部(しっぽ)」をもちます。この頭部と尾部はともに、脊椎動物の進化の過程で獲得されましたが、これは、それぞれ「神経堤細胞」と「神経中胚葉前駆細胞」と呼ばれる細胞集団の出現と深く関係していると考えられています。神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞がどのように出現し、どのような過程を経て進化してきたのかを知ることは、脊椎動物の起源と進化を理解するうえで重要です。 石田祐 理学研究科博士課程学生と佐藤ゆたか 同准教授は、脊椎動物にもっとも近縁な無脊椎動物であるホヤの胚が、脊椎動物の神経堤細胞と神経中胚葉前駆細胞の両方の性質をそなえた細胞をもつことを見出しました。研究成果は、頭部をつくり出す神経堤細胞と尾部をつくり出す神経中胚葉前駆細胞が進化的にはもともと一つの細胞集団であり、脊椎動物の系統におい

    脊椎動物らしさをつくる細胞群の進化的起源―脊椎動物にもっとも近縁なホヤから探る―
  • 機能性食品の臨床試験を元にした広告への問題提起 ―優良と誤認させる要素が多く含まれる―

    片岡裕貴 医学研究科客員研究員(兼:京都民医連あすかい病院医師)、染小英弘 国保旭中央病院医長、山乃利男 岡山大学博士課程学生、伊藤達也 和歌山県立医科大学教授、鈴木智晴 浦添総合病院医師、柘植孝浩 倉敷成人病センター副主任 、藪﨑肇 甲賀病院センター長、土肥栄祐 国立精神・神経医療研究センター室長の研究グループは、メタ疫学研究により、開発業務受託機関(CRO)により実施された、一部の機能性品の臨床試験の論文およびそれをもとにした広告に、優良と誤認させる要素が多く含まれることを明らかにしました。 機能性表示品の届け出を行う際、品の製造・販売会社はしばしば機能性を証明するための臨床試験を開発業務受託機関に依頼します。それらの研究の質や、その結果がどのように消費者やメディアに伝えられているかはこれまであまり検証されてきませんでした。研究では、日の大手CRO5社によって実施された臨床

    機能性食品の臨床試験を元にした広告への問題提起 ―優良と誤認させる要素が多く含まれる―
    agrisearch
    agrisearch 2024/03/04
    「日本の大手CRO5社によって実施された臨床試験をランダムに抽出し、論文およびそれをもとにした広告を調べることで、結果と結論の不一致(spin)が多く含まれることを明らかにしました」
  • コケ植物の卵細胞を生み出す遺伝子を発見―陸上植物の生殖細胞をつくる機構とその進化―

    陸上植物は、藻類の一種を共通祖先として進化してきましたが、コケ植物と、花を咲かせる被子植物では生殖細胞の発生の様式が大きく異なります。被子植物では、雌しべに生じる胚のうの中に卵細胞と中央細胞を、また雄しべで生じる花粉の中に精細胞をつくりますが、コケ植物では、造卵器・造精器とよばれる生殖器官を形成し、その中にそれぞれ卵細胞と鞭毛をもつ精子をつくります。これらの組織の発生と生殖細胞の分化のメカニズムは、未だ多くの部分が不明のままになっています。 包昊南 生命科学研究科研究員(研究当時:同博士課程学生)、孫芮 同研究員(研究当時:同博士課程学生)、岩野恵 同研究員、吉竹良洋 同助教、山岡尚平 同准教授、河内孝之 同教授らのグループは、安喜史織 奈良先端科学技術大学院大学助教、梅田正明 同教授、西浜竜一 東京理科大学教授らと共同で、コケ植物のゼニゴケが、被子植物の胚乳の元になる細胞である中央細胞の

    コケ植物の卵細胞を生み出す遺伝子を発見―陸上植物の生殖細胞をつくる機構とその進化―
  • 研究成果を国際誌に公開~伝統的な里山管理は根っこから斜面を安定させる!~

    檀浦正子 農学研究科准教授は、兵庫県立農林水産技術総合センター(森林林業技術センター)、東京大学、名古屋大学、福知山公立大学、兵庫県立大学との共同研究により、放置された里山に多く生育するヒサカキについて、個体あたりの幹数の違いが斜面の土壌崩壊に及ぼす影響を世界で初めて明らかにしました。この結果は、幹を間引く伝統的な里山管理の意義を科学的に支持しており、放置里山の具体的な管理手法として期待されます。 研究成果は、2024年2月16日に、国際学術誌「CATENA」に掲載されました。 複数の幹をもつヒサカキを単数幹化する伝統的管理 複数幹化は攪乱に対する反応である一方、伝統的管理による単数幹化によって、土壌崩壊に対する抵抗力を高める。

    研究成果を国際誌に公開~伝統的な里山管理は根っこから斜面を安定させる!~
  • シカの森林被害は土壌微生物にも波及する―大規模生態系操作実験と環境DNA分析の融合―

    文および「詳しい研究内容について」(PDF)を一部修正しました。(2024年1月9日) 現在、日の森林では、多くの地域において、ニホンジカ(以下、シカ)の害による植生の荒廃が深刻化しています。シカの害が森林に与える影響を理解するためには、土壌を含む生態系全体への波及効果の分析が必要となります。植物が減ると土壌の性質や土壌微生物に影響を与え、その影響が植物自体に跳ね返ってくるため、土壌微生物の多様性が低下し、さらなる生態系の変化の引き金となる可能性があるからです。しかし、シカによる害が、土壌微生物の多様性や種組成にどのような影響を与えるかは明らかになっていませんでした。 門脇浩明 白眉センター/農学研究科特定准教授、庄三恵 生態学研究センター准教授、中村直人 農学研究科博士課程学生らの研究グループは、芦生(あしう)生物相保全プロジェクト(ABCプロジェクト)メンバーら(高柳敦

    シカの森林被害は土壌微生物にも波及する―大規模生態系操作実験と環境DNA分析の融合―
  • 幼児期の感情制御は腸内細菌叢と関係する- 腸内細菌叢を活用した新たな発達支援を目指して-

    自己の欲求などをコントロールする感情制御は、前頭前野の急激な発達により、幼児期に顕著に発達します。この時期の感情制御は、将来(成人期)の社会経済力を予測することもわかっています。しかし、この時期の感情制御には大きな個人差がみられ、それに関連する要因については不明なままです。最近、「脳―腸―腸内細菌叢相関」という双方的な関連から中枢神経機能をとらえる研究が注目を集めています。成人を対象とした研究では、腸内細菌叢は身体の健康のみならず、こころの健康(不安やうつ)にも関連することが示されていますが、乳幼児を対象とした研究はほとんど行われていません。 明和政子 教育学研究科教授、藤原秀朗 同博士後期課程、萩原圭祐 大阪大学特任教授らの共同研究グループは、3~4歳の日人幼児257人を対象に、感情制御を含むいくつかの種類の認知機能が、腸内細菌叢や習慣とどのように関連するかを検討しました。その結果、

    幼児期の感情制御は腸内細菌叢と関係する- 腸内細菌叢を活用した新たな発達支援を目指して-
    agrisearch
    agrisearch 2023/10/24
    「この時期の感情制御の困難さには、炎症との関連が指摘される菌叢が関連…感情制御の発達リスクは、緑黄色野菜の摂取頻度の低さや偏食(限定的な食事の好み)とも関連することがわかりました」
  • モグラ科の新種をベトナム最高峰で発見―地表性モグラ類ミミヒミズの進化に迫る―

    川雅治 総合博物館教授、岡部晋也 同研究員、Hai Tuan Bui ベトナム科学技術アカデミー研究員、Linh Tu Hoang Le 同学生、Ngan Thi Nguyen 同学生らの研究グループは、ベトナムからモグラ科ミミヒミズ属の新種を発見しました。この哺乳類の新種は、ベトナム最高峰ファンシーパン山から見つかり、これまでに中国から知られる近縁種とは異なる形態的特徴をもち、遺伝的にも分化していることから、新種 Uropsilus fansipanensis(ファンシーパンミミヒミズ)として記載されました。この新種は、ベトナムから初めて見つかった世界で9番目のミミヒミズ亜科の一種です。山岳地域にのみ分布するミミヒミズ類では、新種が100年近く発見されてこなかった一方、2013年と2021年に相次いで中国から新種が報告され、その種多様性が注目を集めています。今回のファンシーパンミミヒミ

    モグラ科の新種をベトナム最高峰で発見―地表性モグラ類ミミヒミズの進化に迫る―
  • ソバゲノムの解読―高精度ゲノム解読がソバの過去と未来を紡ぐ―

    2050年の世界人口は97億と予想され、イネ、コムギ、トウモロコシなどの三大穀物への料の依存が問題視されています。これに対し、料としての価値が高いにもかかわらず研究が遅れ、未開発のポテンシャルが秘められたままの「孤児作物」への関心が増しています。次世代シーケンシング技術による孤児作物のゲノム解読は、その効率的な育種を促進し、飢餓の撲滅や栄養改善などのSDGs達成への重要なステップとなることが期待されています。 安井康夫 農学研究科助教らの国際共同研究グループ(理化学研究所、農業・品産業技術総合研究機構、千葉大学、京都府立大学、かずさDNA研究所、総合研究大学院大学、中国・雲南農業大学、英国・ケンブリッジ大学など)は、孤児作物の一つであるソバのゲノム配列を染色体レベルで高精度に解読することにより、ソバのゲノムの進化と栽培ソバの起原を解き明かしました。さらに、予測された遺伝子をゲノム編集

    ソバゲノムの解読―高精度ゲノム解読がソバの過去と未来を紡ぐ―
  • コロナ禍で5歳児に約4か月の発達の遅れ―3歳、5歳ともに発達の個人差拡大―

    多くの既存研究は、コロナ禍が就学児の学力などに負の影響を与えることを示唆しています。しかし、コロナ禍が乳幼児の発達にどのような影響を与えたのかは、これまでほとんど分かっていませんでした。 佐藤豪竜 医学研究科助教、深井太洋 筑波大学助教、藤澤啓子 慶応義塾大学教授、中室牧子 同教授からなる研究グループは、公益財団法人東京財団政策研究所と共同で、首都圏のある自治体の全認可保育所に通う1歳または3歳の乳幼児887名に対し、2017年から2019年までの間に1回目の調査を行いました。2年後に2回目の調査を行い、追跡期間中にコロナ禍を経験した群とそうでない群の間で、3歳または5歳時の発達を比較しました。分析の結果、5歳時点でコロナ禍を経験した群は、そうでない群と比べて平均4.39か月の発達の遅れが確認されました。一方、3歳時点では明確な発達の遅れはみられず、むしろ発達が進んでいる領域もありました。

    コロナ禍で5歳児に約4か月の発達の遅れ―3歳、5歳ともに発達の個人差拡大―
  • 「採水」で海の魚の種間関係を推定―環境DNA分析の新たな展開―

    近年、生物モニタリングにおいて、環境中に残存するDNA(環境DNA)を分析し、そこに存在する生物を網羅的に検出する「環境DNA分析」の利用が広がっています。しかし、これまでの環境DNA研究はほとんどの場合、ある種や系統がいる・いない、といった情報を引き出すのにとどまっていました。 今回、潮雅之 白眉センター特定准教授(現:香港科技大学助理教授)、益田玲爾 フィールド科学教育研究センター教授、笹野祥愛 農学研究科博士課程学生(現:水産研究・教育機構研究員)、宮正樹 千葉県立中央博物館主任研究員、長田穣 東北大学助教らの研究グループは、千葉県房総半島沿岸から得た魚類環境DNAの高頻度時系列データを解析することで、魚種間の関係性を検出できることを示しました。 研究で示された環境DNA時系列データから生物間相互作用を検出する枠組みは、これまで困難であった「野外環境下での生物間相互作用の網羅的モニ

    「採水」で海の魚の種間関係を推定―環境DNA分析の新たな展開―
  • ショウジョウバエ原腸胚における1細胞遺伝子発現アトラスを作成 ―ゲノム情報による発生制御の解明に向けた基盤的リソース―

    近藤武史 生命科学研究科特定講師 (現:理化学研究所チームリーダー)、坂口峻太 同博士課程学生(日学術振興会特別研究員DC1、現:同研究員)らの研究グループは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)原腸胚を構成する各細胞における全遺伝子の発現を定量解析し、高解像度の空間情報を含む1細胞遺伝子発現アトラスを構築しました。 動物のゲノムには数万の遺伝子がコードされています。そして、この数万の遺伝子が複雑に絡み合いながら協調して働くことによって、複雑な発生現象が正確に進行すると考えられます。しかし、遺伝子が時空間的に協調して発生を制御する仕組み・ルールの理解には未だ至っていません。その理由の一つとして、発生中の胚における細胞単位での定量的な遺伝子発現情報が不足していることが挙げられます。 キイロショウジョウバエ原腸胚はまさに細胞分化とダイナミックな形態形成が進

    ショウジョウバエ原腸胚における1細胞遺伝子発現アトラスを作成 ―ゲノム情報による発生制御の解明に向けた基盤的リソース―
  • シロアリの王と女王の特別食を世界初解明―王と女王の繁殖と長寿を支えるロイヤルフード―

    シロアリが木をべ、それを腸内微生物の働きによって栄養に変えて生活していることはよく知られています。しかし、木をべるのは専ら働きアリの仕事で、王や女王は働きアリから特殊なべ物を与えられて、繁殖に専念しています。そして、その特別研究でロイヤルフードと命名)によって王や女王は何十年も活発な繁殖を続けることが出来ます。このロイヤルフードが一体どのような成分なのか、これまで謎に包まれていました。 松浦健二 農学研究科教授、高田守 同助教、田﨑英祐 同日学術振興会特別研究員(現:新潟大学助教)、三高雄希 同特定研究員(現:日学術振興会海外特別研究員)らの研究グループは、浜松医科大学との共同研究により、ヤマトシロアリを用いて王と女王の給餌物の採取と分析に成功し、世界で初めてシロアリのロイヤルフードの成分を特定しました。 研究成果は、2023年7月4日に、国際学術誌「PNAS Nexus

    シロアリの王と女王の特別食を世界初解明―王と女王の繁殖と長寿を支えるロイヤルフード―
  • 高齢出産のためにサルは成長し続ける―ヒトの出産進化の解明にむけて―

    ヒトとは異なり、サルには基的に閉経はなく、死ぬまで子供を産み続けます。森直記 理学研究科准教授、川田美風 同助教、富澤佑真 同博士課程学生、西村剛 ヒト行動進化研究センター准教授、兼子明久 同技術職員からなる研究グループは、日人に馴染み深いニホンザルをCT撮像し、赤ん坊から高齢期まで、出産の要である骨盤の形態変化を詳細に分析しました。その結果、ニホンザルのメスでは骨盤形態がオトナになっても成長期のように変化し続け、高齢になるほど、産道の前後径が約10%大きい、より出産に適した骨盤になることを発見しました。サルは死ぬまで出産を続けられるものの、高齢になるとホルモンバランスの変化などにより出産のリスクが高くなるといわれています。高齢期に至るまで骨盤形態が変化し続けるのは、加齢による出産リスクの上昇を緩和するためだと考えられます。メスが出産のためにオトナになっても身体的な「成長」を続けると

    高齢出産のためにサルは成長し続ける―ヒトの出産進化の解明にむけて―
  • 緑藻で見出されたメス・オスを決めるしくみ―タンパク質の組み合わせがメス・オスを作る―

    「性」は生物学の最大の謎の一つです。緑藻(ボルボックス類)の性決定遺伝子スイッチ(転写因子)として、MID (MInus Dominance)が知られてきました。緑藻の性の原型はメスですが、MIDが機能するとオスへの分化が引き起こされます。しかしその制御機構の詳細は、これまで全く分かっていませんでした。 浜地貴志 理学研究科特定研究員(研究当時)と西村芳樹 同助教は、耿颯 米国・ドナルド・ダンフォース植物科学センター博士、ジム・ユーメン 同博士との国際共同研究により、「雌雄決定に関与する鍵タンパク質」を発見し、この新たな転写因子を「Volvocine Sex Regulator (VSR) 1:ボルボックス類の性制御因子1」と名付けました。 まずVSR1が破壊された場合、多細胞のボルボックスと単細胞のクラミドモナスのいずれにおいても、オスもメスも有性生殖ができなくなりました。次にVSR1タ

    緑藻で見出されたメス・オスを決めるしくみ―タンパク質の組み合わせがメス・オスを作る―
  • 仏教対話AIの進化:「ブッダボットプラス」の開発―ChatGPT4搭載でより詳しい回答が可能に―

    熊谷誠慈 人と社会の未来研究院准教授と古屋俊和 株式会社テラバースCEOは、生成系AIChatGPT4」を応用した新型チャットボット「ブッダボットプラス」を共同開発しました。「ブッダボット」は、仏教経典を学習し、様々な悩みに対して宗教的観点から回答する対話型AIで、両開発者が2021年3月に公表しました。ただ、このブッダボットはGoogle社提供のアルゴリズム「Sentence BERT」を応用したものであり、(文章の生成は行わず)仏教経典の文言そのままの形で回答するものでした。ソースについては信頼性があるものの、ユーザーの聞きたい内容について、わかりやすい言葉で回答することはできませんでした。今回、ChatGPT4を応用したブッダボットプラスは、質問への回答として、仏教経典の文言をそのまま提示したうえで、ユーザーの質問内容に即した解釈・追加説明を併せて生成して提示することが可能となりま

    仏教対話AIの進化:「ブッダボットプラス」の開発―ChatGPT4搭載でより詳しい回答が可能に―
  • "AIの目"によるイネ収穫量の簡単・迅速推定

    イネは、わが国では言うまでもなく、世界的にみても人口の約半数が主としている非常に重要な作物です。田中佑 農学研究科准教授(現:岡山大学教授)、齋藤和樹 コートジボワール・アフリカライスセンター(Africa Rice Center)主任研究員(現:フィリピン・国際イネ研究所(International Rice Research Institute)博士)、桂圭佑 東京農工大学准教授、辻泰弘 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター博士、高井俊之 同博士、田中貴 岐阜大学准教授、間香貴 東北大学教授らを中心とする研究グループは、国際的な研究ネットワークを通じて国内外から大量のイネ画像と収穫量のデータを収集し、AIに学習させました。これにより、野外で生育するイネの収穫期の画像を撮影するだけで、高い精度で面積あたり収穫量(収量)を推定する技術を開発しました。技術は幅広い品種や環境条件

    "AIの目"によるイネ収穫量の簡単・迅速推定
    agrisearch
    agrisearch 2023/07/31
    「国際的な研究ネットワークを通じて国内外から大量のイネ画像と収穫量のデータを収集し、AIに学習…野外で生育するイネの収穫期の画像を撮影するだけで、高い精度で面積あたり収穫量(収量)を推定する技術を開発」
  • 地上と地下の生態系をつなぐ「コア生物種」―DNAメタバーコーディングで見えてきた食物網の季節動態―

    鈴木紗也華 生態学研究センター博士課程学生(研究当時)と東樹宏和 同准教授および馬場友希 農業・品産業技術総合研究機構上級研究員らの研究グループは、生物多様性を網羅的に解明する「DNAメタバーコーディング」技術を応用し、50種のクモと約1,000種の餌生物が織りなす物網の構造とその動態を解明しました。 他の生物を捕する生物の体内には、餌種のDNAが含まれています。プロジェクトでは、早春から晩秋の草原生態系を対象とした野外調査で2,000個体以上のクモを採集するとともに、その全個体について餌種DNAをターゲットにした分析を実施しました。その上で、物網の構造をネットワーク科学の観点から解析しました。 その結果、物網の構造が季節の移り変わりとともに劇的に変化している様子を捉えることに成功しました。検出された約1,000種の餌種の中には、植物の葉をべる昆虫や地下の有機物をべるトビム

    地上と地下の生態系をつなぐ「コア生物種」―DNAメタバーコーディングで見えてきた食物網の季節動態―
    agrisearch
    agrisearch 2023/07/31
    農研機構との共同研究