農薬パラコートは1960年代から米国で販売され、買収、合併、スピンオフを経て、現在はシンジェンタの製品として売られている Keystone / Charlie Neibergall スイスに本社を置く多国籍企業シンジェンタは、農薬の安全性をめぐり米国農家から約380件もの訴訟を起こされている。すでに1億8750万ドル(約214億円)を和解金として準備したが、今後数十億ドルにも膨らむ可能性がある。
農薬パラコートは1960年代から米国で販売され、買収、合併、スピンオフを経て、現在はシンジェンタの製品として売られている Keystone / Charlie Neibergall スイスに本社を置く多国籍企業シンジェンタは、農薬の安全性をめぐり米国農家から約380件もの訴訟を起こされている。すでに1億8750万ドル(約214億円)を和解金として準備したが、今後数十億ドルにも膨らむ可能性がある。
13日の国民投票では、化学合成農薬の使用を完全に禁止すべきか否かが問われる。だがイニシアチブ(国民発議)支持者の主張は本当に正しいのだろうか?農薬が与える真の影響とは?ファクトチェックを行った。
スイスの動物保護法の厳しさは世界有数だ。EUと比較すると、農用動物の飼育面積は広く、生きた動物の輸送も短時間に定められている。養鶏のバタリー飼育、フォアグラ、カエルの足の切断、無麻酔下の子豚の去勢などはすべて禁止。農場は小規模で、有機・認証農場の密度が高い。そして、環境にやさしい農法や動物にやさしい飼育法には多額の補助金が支給されている。 © Marcel Bieri EU法はスイスの法律ほど厳しくないばかりか、その誘導のしかたはときに逆効果を招くこともある。例えば、EU圏の農業従事者が土地の一部を再自然化すると、耕作面積が減少して補助金の減額につながることもある。 ドイツ人エコノミストで緑の党の欧州議会議員でもあるスヴェン・ギーゴールト氏は、「根本的な問題は、ヨーロッパの助成金が面積単位で支給されていることだ」と話す。「EUの補助金には、環境保護や動物保護に関する厳しい条件が付されていな
スイス連邦政府は2017年、長期的な水質土壌汚染リスクの5割削減を目指す行動計画を採択した一方で、全ての農薬を禁止すれば、食糧生産レベルを維持することは難しいだろうとの見解を示した Keystone / Tamas Soki スイス国内の農薬の使用および販売を制限するよう求める2つのイニシアチブ(国民発議)が先月、国民議会(下院)で議論された。有害化学物質を段階的に禁止するためには、農薬メーカーとスイス連邦政府は取り組みを強化すべきだと国連の有害廃棄物特別報告者は指摘する。
「クロルピリホスとクロロタロニルは1960年代に導入された農薬で、健康や環境への悪影響はずっと以前から知られている。例えば、サリンの一種であるクロルピリホスは、子供の知能指数(IQ)の低下と関連がある」と強調するのは、ローザンヌ大学の環境毒性学者、ナタリー・シェーヴルさんだ。シェーヴルさんによると、今回の認可取り下げの発表は偶然ではない。「一般的に、農薬が禁止されるのは、その農薬がもはや利益を生まなくなり、メーカーがより利潤の高い農薬を販売しようとしている時だ。今回の場合、政治的な圧力もあったはずだ」と説明する。 「政治的なタイミングではない」スイスの環境保護団体も政治的圧力を疑う。スイス国内の農薬の使用と販売とを厳しく制限するよう求める2つのイニシアチブが先月、国民議会で議論された。これらのイニシアチブは来年、国民投票に掛けられるが、今のところ、国民から強い支持を得ている。 市民や非政府
そう考えていたある日、たまたま近所の人が撒いた殺虫剤の残滓(ざんし)が、おたまじゃくしのいる小さな沼に落ちるのを目にした。翌日、おたまじゃくしの成長は止まっていた。疑念が確信に変わり、有機農業への転換を決心する。 ビオスイス ペグイロンさんの農場が有機農場として認定されて、生産した農産物に有機ラベルを貼付できるようになってから2年近くが経つ。 こうした有機農場を後押しするのが、有機農業認定機関「ビオスイス」による裏付けだ。 ビオスイスは、有機農業の推進を目的に1981年設立。有機農業基準で定めた栽培・飼育条件を生産者が守っているかどうか厳しく審査する。ビオスイス認定の有機農場数は現在、6000戸を超える。 スイスの有機食品市場も堅調に拡大している。2015年の有機食品売上高は、前年比5.2%増の23億2300万フラン(約2622億円)。1人あたりの年間消費額は280フランで、世界トップに立
スリランカでは2008年、農薬業界に衝撃が走った。同国の農薬に関する技術勧告委員会が、パラコート、フェンチオン、ジメトエートなど一部の農薬を市場から回収するよう命令したからだ。回収の理由は、これまでのように人や環境に与える危険性を回避するためではなく、農薬を使った自殺が同国で多発しているためだった。 世界保健機関(WHO)は、今年9月に発表した自殺防止に関する初の報告書で、農薬による自殺の多さを問題に取り上げている。その数は世界の自殺者の約3割に上ると推測されており、12年だけでも24万人が農薬を服用して自殺したとみられている。特に、農村人口の多くが小規模農業に従事する途上国や新興国で、農薬による自殺が拡大している。 企業責任 農薬が自殺の手段となっていることに対して、スイスの農薬大手シンジェンタなどのメーカーに責任を求める声が上がっている。しかし、「薬物や薬を使った自殺があるからといって
タンザニアの農家は気候変動の記録に携帯電話を使っている。天候や新しい害虫が収穫に与える影響を観察し、そこに保存しているのだ。スイスの研究者が始めた、ユニークな気候変動研究モデルの成果を紹介しよう。 「当初は農家に気候変動の情報を伝えなければと思っていたが、それは世間知らずというものだった」。こう話すのはフアニータ・シュェプファー・ミラーさん。芸術家であり、連邦工科大学チューリヒ校(EHTZ/EPFZ)の研究者でもある。タンザニアに赴き、気候変動が農業に与える影響を調べた。 「彼らが気候変動のことについてよく知っており、それにすでに順応していることはすぐに分かった。そのためプロジェクトでは、順応のための戦略について話し合うプラットフォームを作ることになった」 こうして農家の人々は携帯電話を受け取り、日々の作業で気づいた気候変動の影響を記録するために、写真やビデオクリップの作り方を教えてもらっ
ミツバチの劇的な大量死と消滅は、ここ数年世界中で起きている現象だ。農薬や気候変動、電磁波まで原因とされているが、主因はやはりダニの一種のバロアダニ(ミツバチヘギイタダニ)の繁殖だ。 2007年にアメリカでミツバチの大量死が報告されて以来、世界中で同じ現象が起きている。ところが、2011年の秋から2012年の冬にかけ、スイスでは初めて壊滅的なミツバチの消滅が報告された。 連邦経済省農業局(BLW/OFAG)の調査によると、スイス全国のコロニーの5割、つまり10万個のコロニーが全滅したのだ。 第一の原因はバロアダニ ミツバチ消滅の原因は多様で、除草剤と殺虫剤の使用、花の多様性の欠如、病原菌の繁殖、気候変動、遺伝子組み換え作物の導入、電磁波などが挙げられている。 しかし、専門家は第一の原因はバロアダニ(Varroa mite)によるバロワ病だとしている。「いくつもの研究が、もしこのダニが大量に寄
人と物の往来の自由化に伴い、近年多くの害虫がスイスに上陸してきた。それらの中にはヒトスジシマカのように人に直接被害を与えるものもある。しかし外来昆虫の一番の脅威は、生物多様性と農業に対する影響だ かつては海、山、砂漠といった自然の防壁があったが、近年ではそれを越えてやって来る侵略的外来種が増え続けている。スイスではここ数カ月間、特にアジア原産の昆虫が注目を集めている。「数年前からすでに外来昆虫の種類は増えていたが、最近ではアジア産の昆虫が蔓延(まんえん)し出し、非常に気がかりだ」とシャンジャン・ヴェーデンスヴィル農業研究センター(Station de recherche agroscope de Changins-Wädenswil)に勤める昆虫学者ステーヴ・ブライテンモザーさんは言う。 例えば、体長約3ミリメートルと裸眼ではほとんど気がつかないほど小さく、見かけは貧弱な日本産のクリタマバ
スイスでは多くの消費者が、地元産の農作物を買い、国内で自給自足ができるのが理想だと考えている。現実はしかし、スイスは農産物の約4割を輸入に頼っている上、頼りとなる生産者の農家はますます減少している。 このままでいけば、農産物は何千キロメートルも離れた場所から運ぶことになり環境にも悪い影響を与える。また、農業が工業化するにつれ、少数の農家しかその恩恵にあずかれなくなる。10月、農業労働者組合「ユニテレ( Uniterre ) 」がベルンで開いたシンポジウムには、食専門家、環境科学者、労働組合、政治家などが集まり、スイスの食事情について話し合った。 自給率が低いスイス シンポジウムに参加したフリブール/フリブルク州議員でスイス農業組合 ( SBV/USP ) 会長を務める ジャック・ブルジョワ氏は、各国が自国内の食糧消費量に応じ、自国産の食物で需要に応じることが国の食糧政策の基本だと言う。 「
公園でけがをしたり、遊具から転落したりした子どもに母親が素早く駆け寄り、白い小さな粒を口に含ませる姿は、スイスでよく見かける光景だ。この粒がホメオパシー薬の1つアルニカ。打撲、傷、さらに精神的ショックにも効果がある。 スイス国民は5月17日の国民投票で、ホメオパシー、薬草療法などの代替医療を憲法に盛り込むことに同意した。中でもホメオパシーは、内科医の資格を持ち同治療を行う医師が320人いる、スイスで非常に一般的に受け入れられている治療方法だ。 抵抗力を高める 「ホメオパシーは慢性病に効く。子どもの病気では、インフルエンザ、中耳炎、胃腸炎、不眠症、性格的問題など。大人では、炎症性のもので、頭痛、花粉症、急性の蓄膿症など、3カ月ごとに繰り返し同じ症状が出る人に特に有効だ」 とホメオパシー医師、ブルーノ・フェローニ氏は言う。 ホメオパシーは、基本的に病気と似た症状を起こさせる植物、動物、鉱物など
最近はエコ栽培による木綿の衣料品も徐々に出回るようになった。とはいえ、いまでも綿畑の農薬で毎年、何千人もの人たちが死んでいく。 綿畑のエコ栽培の比率は非常に低い。その総面積は世界の農地全体の2.5%を占めるだけにもかかわらず、世界全体で使われる農薬の16%が綿畑に散布されているという。 農薬害で年間2万人が死亡 農薬は綿畑の労働者の健康を害し、水汚染をもたらす。従来型の方法で栽培された木綿は最も安く取り引きされることが多い。商品が安いということは、縫製の労働者に支払われる賃金も安いことを意味する。スイスの人道援助団体「ヘルヴェタス ( Helvetas ) 」は10月中旬、ベルン市内の道路に人間をかたどった白い布のぬいぐるみを置き、こうした実情を行き交う人々にアピールした。ヘルヴェタスによると、綿畑の農薬害で死亡する人の数は毎年約2万人に上るという。 「Tシャツを買う時には、エコ綿でありフ
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