私は究極の方向音痴だ。最近はスマートフォンに付いている地図アプリがやっと使えるようになったので、現地集合に猛反対することは少なくなったけれど、1人行動は依然としてキケン極まりない。 クリック1つで航空写真に切り替えたり、情報がリアルタイムで更新されたりするような世の中だからこそ、地図が正確であることは当たり前だと思いがちだが、技術がまだそこまで発展していなかった時代の地図は空白ばかりで、素朴なものも多かった。 帝国の地理を把握すべく、初代ローマ皇帝アウグストゥスに命じられたアグリッパ将軍の測量士たちは、重いロープと測定棒を持って広大な土地を歩き回っていたのだ。その涙ぐましい努力の結果はすごいことになっている。ローマ近辺は非常に細かく、誰彼の家とまで記載があるのに、中心地から遠ざかっていくにつれてびっくりするほどいい加減になる。 海の反対側に広がるアフリカ大陸やギリシアの東側辺りになると力が