「本当にびっくりした。まさに、これから飛躍しそうな若者だったのに」――。 一目置いていた若者が突然「退職する」と言いだしたのだ。 「誰かに相談したか?」 と聞くと、若者は首を振った。 「もちろん課長が初めてです。誰にも相談していません」 彼だけは辞めないと思っていたけれど… それなら、まだ慰留できるかと思ったのだが違った。決意は固く、すでに転職先も決めていた。 「先月、新商品開発プロジェクトのメンバーに選ばれたとき、喜んでたじゃないか」 「あのときは、転職するだなんて1ミリも考えてなかったのです」 「え! どういうこと?」 何があったのはわからないが、約1カ月で転職を決意し、転職先までも決めてしまっていた。 「実は2週間後から出勤することになっています」 「どこへ?」 「新しい職場です」 「ちょっと待ってくれよ!」 突然部下に呼び出され、退職する。2週間後から新天地で働く。有休も消化させて