文京区本郷で戦前から営業し、近隣の東京大学の学生や研究者らに愛されてきた古書店「大学堂書店」が四月末で閉店する。創業から九十年目の節目、コロナ禍で客足が減ったことで、高齢になった店主が店じまいすることを決断した。惜しむ声が上がる。 (長竹祐子) 「本郷の銀杏(いちょう)とともに九十年」。店内の張り紙が、東大とともに歩んできた長い歴史を伝える。閉店セール中の店には、卒業生らが「学生時代にお世話になりました」と遠方から次々と訪れている。 店主の横川泰一(たいいち)さん(84)の父、精一さんが一九三二(昭和七)年に東大正門の近く、本郷通り沿いで創業した。和歌山に住む博物学者、南方熊楠(みなかたくまぐす)(一八六七〜一九四一年)のために、本を集めたこともある。