「何人ものカウンセラーのところに行きましたが、私が解離性同一性障害だと言うと、どこでも敬遠されました」カウンセリングルームでそう話すのは早苗さん(仮名)、31歳。 いつ、どこで、誰が出てくるのかがわからず、あとから結果を知り、自分に対して恐怖心さえ抱いてしまう「解離性同一性障害」。ここでは、公認心理師である長谷川博一氏が、早苗さんとのカウンセリングから見えてきた、暴力的な人格を持つ「亡霊」の存在について紹介します。(全2回の1回目/後編を読む) ◆◆◆ 患者から突然首を絞められ… 突然、カウンセリングルームのソファーに押し倒された私の首には、勢いよく伸びた女性の右手指が食い込もうとしている。その瞳はカウンセラーである私の瞳を睨みつけ、その口は固く閉じて息の音すら漏らさない。 私が窒息してはならないのは、この人を加害者にしてしまうかもしれないから。心理治療をするためには、今こそ一貫した態度で