作家の水村美苗氏は今年上梓した小説『母の遺産』で親の介護を題材にした。「ママ、いつになったら死んでくれるの?」と文中で嘆く主人公が印象的だ。介護は大きな社会問題になりつつあるが、あなたは老後にオムツを替えてくれる人が今から思い当たりますか? 水村氏の「母の遺産」では、主人公の美津紀が年老いた母の介護にあたる。姉がいるものの、母の面倒をほぼ一手に押し付けられ、介護に追われるうちに夫が若い愛人をつくる。結局、「介護疲れ」で心身ともにボロボロになり、母が死んだ後、夫と離婚する。悲しい話だ。自身の体験を交えて書いたとされている。 母と娘が近くに住んでいるため、小説では介護を可能にしている。しかし、現実には親子が離れて暮らしている家庭が日本では少なくない。介護は成長産業と目されているが、過酷な労働条件と安月給が嫌われ、すでに必要な労働力を確保できない状況にある。要介護認定者は足元で500万人を越えて