私は,子供のころにアーサー・C・クラークの独創性に富んだ『2001年宇宙の旅』を読んだときのことを鮮明に覚えている。特に印象的だったことの一つは,宇宙船ディスカバリー号のミッションの不可欠な要素から,孤独な妄想者に変身していくスーパーコンピュータ「HAL 9000」であった。自己修復,自己改変,自己認識が可能なコンピュータは,その当時の最先端技術のはるか先を行くものであった。そして現在の最先端技術でもそのほとんどは実現できていない。 ただし,クラークの思い描いたものにわずかながら近づいている分野もある。それは小さな問題や不適切な構成を実際に問題が発生する前に自動的に診断し,場合によっては修復までを試行するツールである。IBMはこの自動コンピューティングのビジョンを2,3年前から奨励しており,Microsoftは独自の「Dynamic Systems Initiative」を発表している。こ