今、自動車メーカー各社が取り組んでいる「モデルベース開発(MBD)」。設計から試験、製造までをデジタルデータで行い、開発期間を大きく短縮するものだ。その理想とする姿を分かりやすく言えば、デジタル空間で試作車を企画、設計、開発し、さらに試走も行い、そのデータを工場に送って「試作車なし」でいきなり生産を始める、というイメージだ。これを目指して自動車メーカーがしのぎを削っている。 実際には衝突試験は実車を使う必要があるため、試作車は必ず作らなければならないが、1台数千万円といわれるテスト車両を減らせるだけでも大きな意味はある。そして、その試作車を用意するための部品の製造、その部品のテスト、その部品に使うパーツの開発とテスト……とさかのぼっていくと、「実際の部品の製造とそれを使ったテストを省ける」ことの意味が分かってくる。お金だけではない。部品の完成待ちや、テストの準備、実施、結果待ちの時間も短縮