わたしがガールズバーで働いていた時、知らないふりをするのが仕事だった。 現実を忘れるために酒を飲むので、店に来るたびに卒業大学が変わっているお客さん。酒に詳しい自分であるために酒を飲むので、店に来るたびに同じうんちくを繰り返しているお客さん。 毎回大学違う人はいつもコロンビアとかスタンフォードとか言っていたし、毎回うんちく同じ人はいつもアードベッグとかラフロイグとか言っていた。そこへ米兵が飲みにきた。なんかみんなスンッとした。女性が接客する店でコロンビアとかスタンフォードとかアードベッグとかラフロイグとかおっしゃる男性客の皆さんを前に、わたしがとった行動は、「がんばっている感じでいっしょうけんめいな英語をしゃべる」というものだった。ハロ、ハワユ。ナイスチュミーチュ。ピザ、ラムコーク。 決して、優越してはいけない。 ここまでですでにご不快になられた方がおられるのだろうなと思いながら書き続けて