フィールドワークの参加者に語り掛ける北さん(左)=久保山墓地【時代の正体取材班=石橋 学】在野の歴史研究家、北宏一朗さん(76)は地元の平塚市で旧日本海軍の毒ガス兵器工場の隠された過去を掘り起こしてきた。関東大震災における朝鮮人虐殺の史実がねじ曲げられるのを目の当たりにしたのは2012年。今夏、虐殺の事実さえ認めようとしない都知事の登場を見て、警鐘を打ち鳴らすその手にいよいよ力を込める。原爆により消されかけ、しかし血で手が汚れている側の人間の、それが責務だと任じて。 9月1日、横浜市西区の久保山墓地。朝鮮人の慰霊碑を前に「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」の代表として北さんはフィールドワークの参加者に語り掛けた。「94年前のきょう何が起きたのか思い巡らせてほしい。ちょうど今頃、街は炎に包まれていたはずだ」 やがて「朝鮮人が襲ってくる」という流言が飛び始める。警察、軍隊までもが信じ、自警団を組織し