それは先月のことだ。 私は夢の中でトイレを探してさまよっていた。 猛烈な尿意の中、便座に腰を下ろした時、私は気づく、オシッコが出てこないのだ……。 そう、それは明晰夢。 明晰夢……夢を見ているのに意識はハッキリとしておりそれが夢であることに気づいている状態。 夢の中で夢に自覚的であるということは、見たい夢を見れるということである。 飛びたいと願った次の瞬間にはビルの谷間を滑空することも、好きな人と恋人になることを願えばデートの場面に突然移る。 だが、突然の場面転換による負荷により夢はアッサリと終わる。 ゆっくりと大切に理想の幻覚経と世界を近づける遊び。 巷には催眠音声というものも流行っているが、あれらは結局の所はドラマCDの域を出ておらず、人間に理想の夢を見せるほどの機能は有していない。 明晰夢はまさに本物の夢の中で、理想の世界を描けるのだ。 自分の理想を、自分の意志でリアルタイムに描ける