同時に描かれるのは、劇作家と主演俳優が恋愛関係になるという要素だ。アメリカにおいて1950年代にゲイであることは、それだけで社会を乱す軽犯罪とされていた。エドワード・ノートン演じる劇作家は、そんな自身の恋愛を、密かに男女の出会いとして戯曲に反映させたようだ。それが、「アステロイド・シティ」の主人公である、妻を亡くした痛みに耐える男と、新しい女性ミッジとの関係なのだ。 しかし番組では、劇作家が突如亡くなってしまうことが伝えられる。そのことで主演俳優もまた、自身が「アステロイド・シティ」の主人公と同じく、大事な存在を亡くしてしまった立場に立たされてしまうのだ。そして彼は、悲しい思いを抱えながら新しい女性と出会うという、「アステロイド・シティ」の物語を演じるプロセスのなかで、自分の心も救われるものだと期待していたらしい。 しかし、その心は依然として癒えることがなく、彼はオギーを演じながら、小道具