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ブックマーク / webgenron.com (8)

  • カリブ海の記憶と逃走/闘争する奴隷たち──ポスト西洋的な「自由」概念としてのマルーン化|中村達

    2015年8月、日が戦後70年を迎えた月に、私はイギリスによる植民地支配からの独立後53年目となったカリブ海の島国、ジャマイカにいた。それまで東京の大学で英文学を学んでいた私は、飛び出すように大学院を退学し、ジャマイカの首都キングストンにキャンパスをもつ、西インド諸島大学の博士課程へ留学したのだ。 西インド諸島大学モナキャンパスの英文学科は、英語では“The Department of Literatures in English”と複数形をもちいて表記される。もともと西インド諸島大学は、ジャマイカがイギリスの植民地だった時代に、ロンドン大学の分校として設立された過去をもつ。そのカリキュラムはイギリス国と同一であり、シェイクスピアやワーズワースといったイギリス人作家だけが教えられた。その後、アメリカ人作家の作品もカリキュラムに加えられる。しかしカリブ海の作家たちが授業に取り上げられるこ

    カリブ海の記憶と逃走/闘争する奴隷たち──ポスト西洋的な「自由」概念としてのマルーン化|中村達
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    ebmgsd1235 2024/03/28
    『20世紀ヨーロッパの全体主義に比べれば、奴隷制は奴隷たちに社会での居場所を与え、まだ「人間性の範疇」で扱っていたというこの見解は、アーレントの思想の限界もしくは西洋中心的な側面を露呈しているだろう』
  • チリ、希望と絶望の間で──「社会の爆発」に映画はどう向きあえるか|新谷和輝

    「大変な時期」のチリ 日の大学院でチリの映画運動について研究している私が、1年間の研究調査のためにチリの首都サンティアゴに到着したのは2022年9月2日だった。まだコロナウイルス対策がしっかり行われていた時期で、防疫措置の厳しいチリに入国するために必要な追加のワクチンやら書類やらを準備するのが大変だったことを覚えている。メキシコでの乗り継ぎを含めて約24時間のフライトを終えてぐったりしていた私を、現地で働いている日友人が迎えにきてくれ、街の中心部まで案内してもらった。 チリを訪れるのは初めてで、空港からの道のりではすべての景色が新鮮に見えた。掘建小屋のような家が並んでいる地区もあれば、ヨーロッパのような整然とした住宅街もある。買い物のために訪れたサンティアゴ東部ラス・コンデス地区には、南米で最も大きいショッピングモールや最も高い高層ビルをはじめ、たくさんのショップやレストランが並ぶ。

    チリ、希望と絶望の間で──「社会の爆発」に映画はどう向きあえるか|新谷和輝
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    ebmgsd1235 2024/02/22
    90年の民政移行後もピノチェト時代に制定された1980年憲法はそのままだった?「30ペソではない。30年だ」しかし新憲法はあまりに斬新的で大差で否決。「映画にできるのは~柔軟で可変的なかたちを記憶に与えること」
  • 楽器が買えなきゃ、踊ればいい。──社会主義国家キューバのリアル|ノア

    キューバが革命の国であることはよく知られている。チェ・ゲバラとフィデル・カストロ率いる革命軍が、アメリカの影響下にある独裁政権を倒し、社会主義国の礎を築いた。 そのような武装闘争の歴史や思想背景の強いカリブの島国に、私は計1年以上滞在した。そのため、周囲からは「彼は余程の思念を持ってキューバに行ったのでは」とのイメージを持たれることも多い。期待に添えず申し訳ないが、そういうわけではない。 当初は人気漫画『ONE PIECE』が大好きで、「キューバはカリブ海にあるらしい! ワンピースに出るような海賊がいそうじゃん! 面白そう」くらいの興味だった。決して真面目な動機ではない。 そのような軽いノリで私が最初にキューバを訪れたのは2015年。キューバとアメリカが国交正常化に踏み切り、半世紀ぶりに雪解けへと向かった重要な年だった。それまで外国との貿易機会が限定され、物資不足に悩まされてきたキューバだ

    楽器が買えなきゃ、踊ればいい。──社会主義国家キューバのリアル|ノア
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    ebmgsd1235 2024/02/22
    “キューバは「テロ支援国家」に指定され、商取引の制限はおろか、アメリカ人のキューバへの観光は禁止になる~アメリカでテロ支援国家に指定されているのはキューバ、シリア、イラン、北朝鮮の4カ国のみである”
  • 読書の歴史に問う、これからの「教養」──池田嘉郎×辻田真佐憲×松井健人「全体主義と帝国の教養」イベントレポート

    読書歴史に問う、これからの「教養」──池田嘉郎×辻田真佐憲×松井健人「全体主義と帝国の教養」イベントレポート 2023年12月8日、ゲンロンカフェでロシア史研究者の池田嘉郎、近現代史研究者の辻田真佐憲、そしてドイツ図書館史研究者の松井健人による鼎談が行われた。イベント前半は松井によるナチス時代のドイツについてのプレゼン、後半は池田によるスターリンの読書生活についてのプレゼンからそれぞれ議論が展開する。都度、進行の辻田が同時代の日の文脈についても確認することで、トークは日・独・ソ三地域を横断する射程のひろいものとなった。とりわけ、それぞれのフィールドを架橋する形で、「教養」という概念とその価値を巡っては三者のあいだで緊張感に満ちた議論が繰り広げられた。5時間に及んだイベントの一部をレポートする。 池田嘉郎×辻田真佐憲×松井健人「全体主義と帝国の教養──ドイツ、ソ連、日読書はどう管理さ

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    ebmgsd1235 2024/01/15
    教養の無価値化というのは神秘化、特権化に対抗するという意味で反知性主義。それを自由人の自己形成のためのスキル(教養小説)とみれば人文科学(リベラル・アーツ)しかしポスト・トゥルースの時代、悪貨が跋扈。
  • あいまいなチェコの小説家──ミラン・クンデラのコンテクスト|須藤輝彦

    チェコ・中欧文学の研究者で、現在プラハに滞在中の須藤輝彦さんによる特別寄稿をお届けします。文校了後の昨年12月21日、プラハにあるカレル大学が銃撃され、14人の方が亡くなるという痛ましい事件がありました。記事の末尾には、事件に関してご執筆いただいた追記も掲載しております。どうぞあわせてお読みください。(編集部) 現代チェコを代表する小説家。 自分が専門とする作家をひとことで説明するとき、僕はたいていそう言っている。これまでもそうだったし、これからも多分そうだろう。現代という言葉が20世紀後半を含んでいるかぎり。 その作家とは、昨年の7月11日に94歳で亡くなり話題となったミラン・クンデラだ。代表作は『存在の耐えられない軽さ』。ある意味でキャッチー、ある意味で中二病的、いずれにせよ多くの意味で読み手を選ぶこのタイトルを聞いたことがある方も多いのではないだろうか。 冷戦期に起きた民主化運動

    あいまいなチェコの小説家──ミラン・クンデラのコンテクスト|須藤輝彦
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    ebmgsd1235 2024/01/14
    「ある意味でキャッチー、ある意味で中二病的、いずれにせよ多くの意味で読み手を選ぶこのタイトル」と言えば村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』や『意味がなければスイングはない 』ですよね。
  • 【書評】労農派ピケティは「バラモン左翼」を乗りこえられるか──トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』評|梶谷懐

    リベラル知識人はなぜ「バラモン左翼」と呼ばれるか 東浩紀は、『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)や『訂正する力』(朝日新書)などの最近の著作のなかで、次のようなカズオ・イシグロの言葉にたびたび言及している。 俗に言うリベラルアーツ系、あるいはインテリ系の人々は、実はとても狭い世界の中で暮らしています。東京からパリ、ロサンゼルスなどを飛び回ってあたかも国際的に暮らしていると思いがちですが、実はどこへ行っても自分と似たような人たちとしか会っていないのです。[★1] 東は、開放性を掲げるリベラル知識人が、実は同じ心情や生活習慣を持つ人々の中で閉じたサークルを作っている、という実態を批判する文脈でこの発言に触れている。確かにそれも重要な視点だろう。そのうえで、ここではイシグロがそれに続けて語った内容により注意を向けたい。 私は最近とよく、地域を超える「横の旅行」ではなく、同じ通りに住んでいる人がどう

    【書評】労農派ピケティは「バラモン左翼」を乗りこえられるか──トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』評|梶谷懐
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    ebmgsd1235 2023/12/02
    イシグロのいう感情優先社会にあえてする「縦の旅行」はピケティの普遍的な平等主義(連帯)へと誘うのか?動員のためのオルグを凌駕する友敵ナラティヴ(社会自国主義)、分断の永続、講座派と労農派、財産権社会。
  • 異世界転生とマルチバースと未来のコンテンツ(抜粋)──『ゲンロン15』より|三宅陽一郎

    1 はじめに エンターテインメントに人々が何を求めるかには、時勢や一個人の状態が反映される。なぜなら、どうしても使い続けなければならない日用品と違って、エンターテインメントは嗜好品であって、我慢する必要がないからである。観たくなければ観なくても良い。途中で切り上げてもいいし、それについて気にする必要もない。そうであるから、ある一つの時代のエンターテインメントが特定の方向に舵が切られるということには、それに相応する強い背景があるはずである。稿のねらいは日における「異世界転生もの」と米国における「マルチバース」のブームの背景にある状況と作品の関係を探求するところにある。 たとえば『竹取物語』(平安時代、作者不詳)は月世界という異世界の御子が現生に転生する物語であった。物語の最後、「月の顔見るは、忌むこと」と言われつつ、月の光を浴びて次第に自分の過去を思い出し、かぐや姫は異世界へ帰っていく。

    異世界転生とマルチバースと未来のコンテンツ(抜粋)──『ゲンロン15』より|三宅陽一郎
    ebmgsd1235
    ebmgsd1235 2023/11/15
    行き詰まりや生きにくさを感じている現生を否定、または放棄することを表現、現生に対してリセットボタンを押し新しい世界の希求、異世界はやり直しの世界、主人公は新しい世界へログイン、なろう系と中世ヨーロッパ
  • 熟議はどこまで可能か(後篇)|鈴木寛+東浩紀

    10月30日(月)、ゲンロンカフェにて、ZEN大学(仮称)(設置構想中)と株式会社ゲンロンが共同で運営する公開講座の第3弾を開催します。元参議院議員でZEN大学ではチェアマンに就任する鈴木寛さん、作家の乙武洋匡さんをお迎えし、学びたい人なら誰もが学べる「ユニバーサル教育」とZEN大学の取り組みについて語り合っていただきます。聞き手を務めるのは東浩紀です。 イベントの開催を記念して、約10年前の2012年8月に行われた鈴木寛さんと東浩紀の対談の記録を掲載します。このときのテーマは、同年7月に公開された「新日国憲法ゲンロン草案」。熟議をとおして日はどのように変わることができるのか。当時の空気感とともにお楽しみください。 10月30日に開催されるイベントは、以下のリンクより会場観覧チケット・当日の動画配信(アーカイブは来年4月末まで視聴可能)ともに購入いただけます。ぜひお申し込みください。(

    熟議はどこまで可能か(後篇)|鈴木寛+東浩紀
    ebmgsd1235
    ebmgsd1235 2023/10/22
    10年前、民主党政権末期、震災後の対談。民法の「善管注意義務」というの初めて知った。それで困っている人を手助けすることを奨励してあげられるような良かれと思ったことで勝負できる権利の無知の罪を許す憲法か。
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