わが国古来の美風「祖先崇拝」 終戦直前の昭和20年5月、連日の空襲警報に脅かされる中、日本民俗学の先駆者・柳田國男が「祖先の話」を書き上げた。戦死した多くの若者の魂の行方を想い、日本人の死生観や霊魂感を解き明かした書である。柳田は本書の中で「家の永続は大きな問題とならざるを得ない」と書いているが、「家」の存続は当時からすでに懸念されていた問題であった。柳田はその家の「大切な基礎が信仰であった」と言っているが、当時はまだ国定修身教科書(第5期)で、家における祖先祭祀(さいし)の重要性を次のように教えていた。 「私たちの家は、先祖の人々が代々守り続けて来たものであります。先祖の人々が家の繁栄をはかつた心持は、父母と少しも変りがありません。私たちは、このやうに深い先祖の恩を受けて生活してゐるものです。したがつてこの恩を感謝して、先祖をあがめ尊び、家の繁栄をはかることは、自然の人情であり、またわが