埼玉県久喜市鷲宮。人口3万6000人程度の小さな地区が、とあるアニメのファンの聖地になっていることをご存じだろうか。2007年に放送された『らき☆すた』である。アニメの中で、地区内に実在する神社などがそのままの外観で登場することで、ファンがこぞって訪れるようになった。このように、ファンが実際にアニメの舞台となった街を訪れる「アニメ聖地巡礼」が、地元経済や観光産業のあり方を大きく変えつつある。 筆者はこのアニメ聖地巡礼について2008年の3月ごろから調査を始め、今年9月に『アニメ聖地巡礼の観光社会学』(法律文化社)を上梓した。本原稿では、アニメ聖地巡礼、ひいては、コンテンツツーリズムとは何なのか、そして、それは観光産業をどのように変化させたのかについて論じたい。 ファンにとって「大切な場所」を巡る旅 「アニメ聖地巡礼」は2016年に公開された映画『君の名は。』とともに、一気に数多くの人に知ら