庵野秀明の脚本・総監修で樋口真嗣が監督した映画『シン・ウルトラマン』が絶好調だ。1966年にテレビ放送された『ウルトラマン』からのファンも、平成以降のウルトラシリーズの視聴者も取り込み、次を望む声も聞こえ始めている。映画ではそうした声にすぐには応えられそうにもないが、『シン・ウルトラマン』に似たコンセプトで書かれた小説なら、実はいくつも刊行されている。 一口に『ウルトラマン』のファンと言っても、魅かれるところは人それぞれである。ただ、概ね「怪獣派」「ウルトラマン派」「巨大フジ隊員派」の三つの派閥に分類できるのは明白だろう。 「SFマガジン」2016年8月号に作家の小林泰三が、「巨大フジ隊員のこと」というタイトルで寄せた文章で示したこの指摘が正解だったことは、『シン・ウルトラマン』を見た人なら分かるだろう。怪獣であり外星人といった異形の存在から醸し出される魅力と、ウルトラマンという孤独なヒー