思えば女子の非モテ問題は実に単純です。非モテを自称する男子に理由を聞くと「マメじゃないから」「押しが弱いから」「オタクだから」「理系だから」などなど多種多様な答えが返ってきますが、女子の場合は「容姿がマズイから」に尽きるような気がしてなりません。平林たい子が描く非モテ女子も、もっぱら容貌コンプレックスでがんじがらめです。 たとえば容貌について――少女時代には将来の問題だった容貌の美しくないことが年とともにだんだん近よって松子にはたしかめられて来ていた。女の華やいでいる東京に来て急にそれは切実に感ぜられ出した。心の美は顔の美にまさる。そんな戸籍素性の明かな者同志の間の哲学は、一人一人の内面生活に壁仕切のある近代ではとっくに通用しなかった。それに、顔は美しくても心が醜ければ結局醜く見えるという諺ほど偽善にみちた教訓はない。顔の美しいものは心の美しいように見えるからこそ顔の美に魅力があるのだと