今年の終戦の日は鉛を飲まされたように気分が重く、憂鬱に沈み込まされた一日が続いた。もし六十五年前に生きていて、その朝、真珠湾攻撃の報を聞いたなら、きっと同じような気分で一日中塞がれていたのではないかという思いに捉われる。靖国参拝は予告されていたことだが、実際に決行されると、そこから予想を超えたイベントとモメンタムが生成されて政治的環境を押し包んで行く。そのイベントとモメンタムがさらに鬱懐を深くする。新聞の事前の報道では、昭和天皇の合祀反対メモの影響が出て、小泉首相の靖国参拝に対して反対世論の方が賛成世論を上回っていた。毎日新聞では賛成36%、反対54%、朝日新聞では賛成29%、反対57%。合祀反対メモ露見後の報道と世論の趨勢は一時の精神安定剤の如きだった。ところが参拝直後の15日夜にNHKの終戦特集の討論番組の生放送で報じられたアンケート調査では、この数字が完全に逆転する結果となっていた。