西日本豪雨で11府県に出された大雨特別警報の対象は186市町村にも及んだ。2013年度に制度化されてから10回目の発表となった大雨特別警報で、気象庁は前代未聞の規模で「最後通告」を発していた。その切迫感が自治体や住民には十分に伝わらず、「平成最悪」の広域豪雨災害となった。 7月5日朝。登庁した気象庁の黒良(くろら)龍太・主任予報官は自席のパソコンで目を通した予報資料に驚いた。梅雨前線の停滞で日本列島の広い範囲で今後3日間、24時間雨量が200ミリを超える。見たこともないデータに「大きな河川が氾濫するかもしれない」と焦りを募らせた。 報告を受けた上司の梶原靖司・予報課長は、梅雨前線による大雨では異例の記者会見を開くべきだと考えた。しかし、危険が及ぶ地域を細かく特定するデータはない。庁内には「警戒を呼びかける会見として成立するのか」と懸念もあったが、橋田俊彦長官が「やりましょう」と決断した。
西日本豪雨では、兵庫県内で初めて大雨特別警報が発令されたが、六甲山系で起きた土砂災害は局所的で犠牲者はいなかった。多数の死者・行方不明者を出した80年前の阪神大水害や51年前の「昭和42年7月豪雨」に匹敵する総雨量を観測したが、当時と何が異なったのか。専門家や関係者は「土砂崩れを引き起こす短時間雨量の少なさが背景にある」と指摘する。 神戸・阪神間にまたがる六甲山系では今回、神戸市だけで約100件の土砂崩れを確認。同市灘区篠原台では土石流が起きて民家などに被害が出たが、人的被害はほとんどなかった。 国土交通省六甲砂防事務所によると、今回の総雨量は同市中央区の観測所で438ミリを記録。死者・行方不明者が695人に上った阪神大水害の461・8ミリに匹敵し、県内で98人が犠牲になった昭和42年7月豪雨の371・2ミリよりも多い雨が降ったという。 土石流や土砂崩れを食い止める砂防ダムと治山ダムは2千
西日本豪雨で土砂崩れに遭った広島国際大学(東広島市黒瀬学園台)では、元消防士の教授が「外に出るな」と一部の学生に指示したメールがツイッターで拡散され、けがをした学生も出なかった。教授は「全国いつどこで災害が起きるか分からない。どう対応したら助かるのか、多くの人に知ってほしい」と話している。 安田康晴教授(55)は、医療技術学科で約160人の学生に救急救命学を教えており、12年前まで島根県で消防士をしていた。 大学の敷地内には6日夜の豪雨で土砂が流れ込み、近くの川からは水があふれた。隣に約660人が住む学生寮があるが、丈夫な建物で断水していなかったことから、安田教授は7日昼に「2次災害が最もあってはならない。しばらくの辛抱です。援助隊が来るまで決して外に出ないでください」と教え子に一斉メールを送った。
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