【ロンドン=沢田千秋】今年のノーベル文学賞受賞が決まった長崎市生まれの英国人小説家カズオ・イシグロ氏(62)は五日夕、ロンドンの出版社でメディアの取材に答え、世界中で広がるポピュリズム、国家主義への憂慮を語り、文学など芸術を通じた人間性の回復を訴えた。また、昨年、文学賞を受賞した米国人歌手ボブ・ディラン氏(76)への尊敬の念や妻への愛、日本人としてのアイデンティティーも明かした。 「ポピュリスト、国家主義がはびこり、憂慮すべき時代だ。しかし希望は捨てていない。異なるグループを分断する時代だが、私たちには人間として感情を共有できる文学、映画、音楽などの芸術がある」。イシグロ氏は集まったメディアを前に、身ぶり手ぶり、時にユーモアも交え、熱心に語った。 若いころ、音楽を志したイシグロ氏。ボブ・ディラン氏の存在は大きく、「ディラン氏はずっと私の偉大なヒーロー」と打ち明け、「彼の言葉と作品がなければ