「好きなことで、生きていく」とは、2014年に人気YouTuberが出演したCMで使われた言葉だ。自分が趣味とするもの、好きなことで生きるという人生の歩み方は、YouTuber出現よりも前、1990年代の若者たちも選び始めていた。それは、彼らが社会に出る時期と就職氷河期が重なったがゆえの、実際は消極的な選択だったかもしれない。その後、好きなことで生きているが、何か違う大人になったという思いも消えない。鬱屈した彼らを「しくじり世代」と名付けたのは、『ルポ 京アニを燃やした男』著者の日野百草氏。今回は、好きなことだけして生きている46歳のカメラマニア男性についてレポートする。 * * * 「汗かいちゃった、もうだくだく」 串田明夫さん(仮名・46歳)は私の知る串田さんのままであった。汗を吸ったバンダナ、チェックシャツにベスト、靴は某タイヤメーカーのロゴが誇らしく刻まれた靴。串田さんはぶれない。