野菜としてのパパイヤ ベトナムの青パパイヤのサラダ「ゴイ・ドゥー・ドゥー」 本作は、村上春樹原作の「ノルウェイの森」(2010)の映画化で知られるベトナム出身でフランス育ちの映画監督トラン・アン・ユンの初長編劇映画であり、第46回カンヌ国際映画祭ではカメラ・ドール(新人監督賞)を受賞している。1951年から1960年代にかけての南ベトナムの首都サイゴン(現在のホーチミン市)を舞台にしているが、撮影は現地ロケではなく、すべてパリ郊外のセットで行われた。 物語は10歳の娘ムイ(リュ・マン・サン)がサイゴンのある裕福な家に女中奉公に入るところから始まる。その家は働かずに琵琶ばかり弾いている家出癖のある父(トラン・ゴック・トゥルン)と、布地屋を営んで家計を支える母(トルゥオン・チー・ロック)、祖父が死んで以来お祈りばかりしている祖母、社会人になった長男チェン、中学生の次男ラム、小学生の三男ティンの