沖縄で再会した幻のG1馬 【夏のメモリー=梅崎晴光】夕凪(ゆうなぎ)迫る沖縄のビーチに青毛馬がこつ然と現れ、波打ち際を疾走する。小柄な沖縄在来馬とは明らかに異質な胴長の大型馬。舞うように四肢を弾ませ、やがてコバルトの海へ身を沈ませていく。そんな光景に地元では、たちまち噂が広がった。「北方系の馬じゃないかねえ。こっちにはあんなに大きくて速い馬はおらんさあ」。沖縄に北方系の馬といえば、古琉球期から昭和初期まで続いた沖縄競馬の至宝「野国仲田青毛」。18世紀、琉球王朝の画家・自了の描写によると、今日の競走馬のように胴が長い。亜熱帯の島にサラブレッド? 青毛馬の正体を知りたくて、しばしば現れるという金武湾(沖縄本島中東部)の昆布ビーチを訪れた。目の当たりにした噂の馬は端正な鼻面、勝ち気な目、流れるような後肢のライン。どこかで見たような…。「本土の競走馬だったそうです」と言う乗り手の後を追うと、