幹線道路や線路に囲まれ、街が駅を中心にして東西南北に分断されていた東京・渋谷。地名の通り、街は高低差がある谷地形でもあり、渋谷の移動は一苦労だった。渋谷駅は谷の底に位置し、どの方向に進んでも上り坂が続く。坂道沿いには飲食店やアパレルショップ、娯楽施設などが軒を連ねている。 渋谷にオフィス街のイメージはあまりなかったが、ネットバブル前夜の2000年前後にネットベンチャーやIT企業が相次いで渋谷に拠点を構えるようになる。すると米国のシリコンバレーに対し、「ビットバレー」と呼ばれるようになった。ビットバレーとは「ビター(渋い)」と「バレー(谷)」を掛け合わせた言葉で、ビットにはコンピューターが扱うデータの単位であるビットの意味も込められている。 あれから20年以上の年月が流れ、ビットバレーという呼び名はほとんど聞かれなくなった。そんな中、ネットバブルを勝ち抜いた数少ないベンチャーは、今や大企業に