優しさに溢れる僕は冷蔵庫のためにだって祈りを捧げる。もし冷蔵庫による冷蔵庫のための天国があるのなら無事に辿り着いてほしい。工場のラインで生き別れてしまった親兄弟と再会してほしい。ブリーフにタンクトップ・シャツで暑さに反抗しながら祈る。 昨日、冷蔵庫が壊れた。暑さで中身の腐れるもの全てが腐り、僕は不貞腐れ異臭のなかで「オエェェェ!ウエェェェ!」と呻き声やら鳴き声やら喘ぎ声やら何が何だかわからない奇声と涙を垂れ流しながら冷蔵庫を掃除した。この冷蔵庫は家を改築した際にやってきたのだから丸18年使ったことになる。大往生。長い間、台所の隅から僕の家族に起こったことをその白いボディーに映してきたわけだ。 「そこにある」が当たり前。そういう存在が無くなってしまうのは少し寂しいものだ。もっとも以前と比べると製氷に時間がかかるようになっていたし、時折ブモーップリュプリュと異音を立てたりしていたので「そろそろ