イースト・プレス 2007年9月 こういう本が好きなのだなあ、と思う。 大分以前、ローレンツの本をはじめて読んだときのことを思い出す。30歳すぎたころだと思う。子供ができ、育児というようなことを考えていて、精神分析の説を信じていた。伊丹十三さんや岸田秀さんがさかんに精神分析の啓蒙活動をしていた。伊丹氏が「男というのは馬鹿だ。仕事という誰でもできる他人が代替可能なことをするために、自分の子供を育てるという自分にしかできないことを放棄している」というようなアジテーションをしていた。今から思うとこの伊丹発言はかなりとんでもないもので、女性を家庭に閉じ込めるイデオロギーであるという批判がまずでてきそうであるし、今なら「子育ての大誤解」(J・R・ハリス 早川書房 2000年)といったほうからの反論もありそうである。そもそも精神分析の権威が随分と低下した。しかし、その当時は精神分析を信じていたので、ロ