新型コロナウイルス対策の「頼みの綱」に位置づけるワクチン接種推進に、菅義偉首相が前のめりになっている。自ら掲げた「1日100万回接種」「7月末までに高齢者接種完了」という目標に向け、陳情に訪れた海運業の企業トップに「打ち手不足」の解消への協力を呼び掛けるほど躍起になっている。政府内からは「首相はワクチン以外、見えなくなっている」との声も漏れている。 「あんたのところは産業医がいるだろ。手を貸してくれないか」。5月中旬、新型コロナの影響にあえぐ海運業の経営者らとともに官邸を訪れ、支援を求めた自民党議員に対し、首相はいきなりそう切り出した。 首相がここまで焦っているのは、東京五輪・パラリンピックや衆院選を控え、「ワクチン以外に状況を打開する手だてがないからだ」(首相周辺)。野党の反発が強かった入管難民法改正案の今国会での成立を断念したのも、「国会対応より、ワクチン対応に専念したい意図もあった」