沖縄県、また鹿児島県の奄美諸島にはクチというものがある。 クチというのは、お茶や食べ物などに人を呪詛する呪詞を唱え入れて、相手に飲ませたり食べさせたりして害を成すことをいう。 クチの入ったものを飲んだり食べたりすると吐き気をもよおしたり血を吐いたりして、そのままにしておくと命にかかわる。 そのため奄美などでは若い頃から、見知らぬ家でお茶を飲む場合の注意を親兄弟から教えられるという。これはどんなことかといえば、親指を茶碗の内部に下に向けてお茶を飲むとクチが入っているか否かがわかる。お茶にクチが入っている場合には、お茶がブクブクと泡立ってくるという。こうすることで呪咀のクチが解けて、この呪詛はクチを入れた本人に返され、害もまたその本人に返ってゆく。場合によっては死に至ることもある。 呪術としてのクチを返すことをカエシグチと呼び、これは上記のような方法や、直接呪文を唱え返すという場合もある。また