戦国時代は「応仁・文明の乱」より13年早く、関東から始まった――。 享徳3年(1454)、古河公方と上杉氏の対立に始まる仁義なき抗争。以降30年近くにわたる戦乱を著者は、「享徳の乱」と称すべきと学界に提唱した。本書はこの用語をメインタイトルとし、「戦国時代の開始=応仁の乱」という根強い「国民的常識」を正さんとする著者年来の宿願である。 日本列島での戦国時代の開幕は、一般的には応仁元年(1467)に始まる「応仁・文明の乱」が画期とされることが多い。この戦乱で京は焼け野原となり、下剋上があたりまえの新しい時代が訪れたというわけである。 最近でも、呉座勇一氏のベストセラー『応仁の乱』(中公新書)のサブタイトルは「戦国時代を生んだ大乱」となっている。新書などのタイトルは概して出版社や編集者の意向をうけて決まることが多いから、やはりこれは最大公約数的な見かたといっていいのだろう。 さて、のっけから恐