「国民的」知識人の一人にして、「日本」民俗学の創始者、柳田国男。その柳田が若かりし頃、アナキストのクロポトキンから決定的影響を受けていたことは、これまで知られていませんでした。これこそが、柳田の文学、農政学、民俗学を結ぶミッシングリンクであり、尊皇の国家官僚たる柳田の相貌も、そこから立ち現れてくる――。そうした、まったく新しい柳田像を提示した『アナキスト民俗学』(筑摩選書)。その書き手の一人である絓さんが、PR誌『ちくま』5月号に寄稿された文章を公開します。ぜひ、ご一読を! 「アナキスト民俗学」というタイトルは、言うまでもないが、『負債論』のデヴィッド・グレーバーが標榜する「アナキスト人類学」のパロディーでもある。一九九九年のバトル・イン・シアトル以降、世界的に浮上したアナキズム的潮流に対する違和感が、このタイトルを選択させた理由の一つであり、現代アナキズムの問題系は、柳田国男において、す