子どもに命の尊さを教えることはとても大事だけれど、嘘で塗りかためる必要はないはずだ。生き物は助け合って生きていると言うが、人間は毎日のように家畜を屠殺して食べている事実と反する。ライオンがキリンを群れで襲い生きたまま食べる事実と反する。植物が他の植物の光合成を阻害し枯死させるために葉を広げるように育つ事実と反する。 少し考えればすぐに気付く矛盾だが、子どもがこの矛盾に気付いたときどう説明すればいいだろうか。「命が尊いなんて嘘なの?」と聞かれたら返す言葉がないのではないか。 本書の訴えは美しく、耳に優しいが、やっぱり嘘は嘘である。 もうひとつの懸念はサムシンググレートという存在が「創造論」のような科学を装った宗教、事実を装った思考停止と親和性が高いことだ。 あとがきの対談で著者は木村資生の発言を引用しているが、木村の本意をねじ曲げて紹介しているのは残念だ。木村は偶然では誕生し得ない複雑な構造