神武天皇が大和国の山上から国見をして「秋津のとなめせるがごとし」と言ったという伝説が残っています。「秋津」とはトンボの古い呼び名。そして「となめ」とは交尾のこと。つまり神武天皇には、日本の形がトンボが交尾をしているような形に見えたのでしょう。日本のことをかつて「秋津島(秋津洲、蜻蛉洲などとも書きます)」と呼んでいたこともあるそうです。日本人にとって、むかしからトンボはとても身近な生物だったのでしょう。 現在日本には196種のトンボが確認されています。これらに亜種レベルで区別されるものを18種加えると、214種になります(「トンボのすべて」、井上清・谷幸三共著、トンボ出版、1999年)。あの広いヨーロッパ全体でも116種(別亜種を含む)だそうですから、日本は国土の面積があまり広くない割にトンボのかなり多い国と言えます。その理由はさまざまですが、最も大きなこととしては「水辺環境が豊かである」と