ウォルター・リップマンは『世論』(1922年)で画一的報道をこう批判した。 「われわれはたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る。外界の、大きくて、盛んで、騒がしい混沌(こんとん)状態の中から、すでにわれわれの文化がわれわれのために定義してくれているものを拾い上げる。そしてこうして拾い上げたものを、われわれの文化によってステレオタイプ化されたかたちのままで知覚しがちである」 同書の刊行当時、新聞は活字を拾って紙型を取り、その鉛版(ステレオタイプ)が、輪転機にかけられた。電子印刷の今日、新聞にステレオタイプは使われていないが、「パターン化した画一イメージ」の報道はますます盛んだ。 2月に東京都内の図書館などで「アンネの日記」関連本が破られる被害が相次いでいることがわかったとき、たいていの人が同様の印象を持ったようだ。図書の破損はそれが何であれ厳しく追及されるべき犯罪だが「アンネ