ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (88)

  • 科学研究はどこまで信用できるか『あなたの知らない研究グレーの世界』『サイエンス・フィクションズ』

    研究不正について、私の認識が間違っているのかもしれない。もし誤っているのであれば、指摘してほしい。 まず、2つのケースを紹介する。次に、私の判断を述べる。 ケース1 薬剤Xがタンパク質の血中濃度を上昇させるという仮説検証のため、動物実験を行った。薬剤Xの投与で濃度の平均値は増加することが判明したが、統計学的検定ではp=0.06と、有意水準の0.05にわずかに届かなかった。教授に相談したところ、追加実験を行うこと、さらに実験のたびに検定をして、p<0.05を得た時点で実験を終了するよう指示を受けた。 ケース2 疾患Yの重症化因子を調べるため、診療録から収集した疾患Y患者のデータを元に、臨床検査値と生活習慣の関連性を分析したところ、生活習慣Zを有している患者の予後が不良となる結果を得た。そこで「生活習慣Zを有する疾患Y患者は予後不良である」と学会発表した。 私の考えはこうだ。 ケース1は、 「

    科学研究はどこまで信用できるか『あなたの知らない研究グレーの世界』『サイエンス・フィクションズ』
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    agrisearch 2024/04/15
    「結果が得られない実験(NULL結果)として公表するべきだという」…しかしそんな論文は査読が通らないのでいずれにしてもお蔵入り。
  • ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』

    人はミスをする。これは当たり前のことだ。 だからミスしないように準備をするし、仮にミスしたとしても、トラブルにならないように防護策を立てておく。人命に関わるような重大なトラブルになるのであれば、対策は何重にもなるだろう。 個人的なミスが、ただ一つの「原因→結果」として重大な事故に直結したなら分かりやすいが、現実としてありえない。ミスを事故に至らしめた連鎖や、それを生み出した背景を無視して、「個人」を糾弾することは公正なのか? 例えば、米国における医療ミスによる死亡者数は、年間40万人以上と推計されている(※1)。イギリスでは年間3万4千人もの患者がヒューマンエラーによって死亡している(※2)。 回避できたにもかかわらず死亡させた原因として、誤診や投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、術後合併症など多岐にわたる。数字だけで見るならば、米国の三大死因は、「心疾患」「がん」そして

    ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』
  • 死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』

    面会にやってきた母親を、息子はハグしようとする。母親は身をすくませるため、息子はハグを諦めて、少し離れる。すると母親は悲しげに言う「もうお母さんのことを愛してくれなくなったの?」 母親が帰った後、息子は暴れ出したので、保護室へ収容される。 グレゴリー・ベイトソンは、統合失調症の息子ではなく、母親の言動に注目する。息子のことを愛していると言う一方で、息子からの愛情を身振りで拒絶する。さらに、息子からの愛が無いとして非難する。 息子は混乱するだろう。ハグしようとする愛情表現を拒絶するばかりでなく、そもそもハグそのものが「無かったこと」として扱われる。にも関わらず、息子のことを愛していると述べる……そんな母親に近づけばよいのか、離れればよいのか、分からなくなる。 矛盾するメッセージに挟まれる ベイトソンは、この状況をダブルバインドと名づける。会話による言葉のメッセージと、身振りやしぐさ、声の調子

    死ぬまでに読みたかったベイトソンが「いま」読める幸せ『精神の生態学へ』
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    agrisearch 2023/11/27
    「オープンダイアローグとは、複数人による開かれた対話で行われるメンタルケアになる」「岩波文庫で再版」
  • なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?

    「謝ったら死ぬ病」をご存知だろうか? どんなに証拠を突き付けても、絶対に非を認めない人だ。 プライドの高さや負けず嫌いといった性格的なものよりもむしろ、過ちを認めることが、自分の命にかかわるものだと頑なに信じている。すなわち、「謝ったら死ぬ」という病(やまい)に取り憑かれている―――そんな人がいる。 もちろん、想像力が衰えて視野が狭く、無知な自分を認めたがらないような頑固者なら、可哀そうに思えども理解はできる。 だが、第一線で活躍する知識人や学者で、ものごとを客観視できるはずなのに、この病気に罹っている人がいる。それどころか、その優れた知性を用いてコジツケを考えだし、論理を捻じ曲げ、のらりくらりと言い逃れる。 なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか? ずばりこのタイトルの書を読んだら、疑問が氷解した。 それと同時に、「謝ったら死ぬ病」は私も罹患していることが分かった。「あの人」ほどは酷く

    なぜ、あの人は、あやまちを認めないのか?
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    agrisearch 2023/11/19
    「この病の原因である「自己正当化」と「認知不協和」を解説し」
  • 認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』

    小説の面白さはどこから来るのか? 物語のオリジナリティやキャラクターの深み、謎と驚き、テーマの共感性や描写の豊かさ、文体やスタイルなど、様々だ。 小説の面白さについて、数多くの物語論が著されてきたが、『小説の描写と技巧』(山梨正明、2023)はユニークなアプローチで斬り込んでいる。というのも、これは認知言語学の視点から、小説描写の主観性と客観性に焦点を当てて解説しているからだ。 特に興味深い点は、小説の表現描写が、人間の認知のメカニズムを反映しているという仮説だ。私たちが現実を知覚するように、小説内でも事物が描写されている。 認知言語学から小説の描写を分析する 通常ならメタファー、メトニミーといった修辞的技巧で片づけられてしまう「言葉の綾(あや)」が、ヒトの、「世界の認知の仕方」に沿っているという発想が面白い。これ、やり方を逆にして、認知科学の知見からメタファーをリバースエンジニアリングす

    認知言語学から小説の面白さに迫る『小説の描写と技巧』
  • 経済学はどこまで信用できるのか『経済学のどこが問題なのか』

    経済学が、うさんくさい。 ネットで見かける経済学者の態度が偉そうだとか、オレサマ経済理論を振りかざす連中の断定口調が気に入らないとか、そういうのをさっ引いても、経済学そのものに不信感がある。何か騙されているような感覚がつきまとう。 この記事では、『経済学のどこが問題なのか』(ロバート・スキデルスキー、名古屋大学出版会、2022)をダシに、経済学そのものが抱える問題について、以下の構成で考察する。 ・自然科学の体裁としての数式・モデル ・現実との乖離の埋め方 ・経済学の何が問題か ・経済学のうさんくささ、クルーグマンは知っていた ・もし経済学者が馬だったら ・行動経済学の罪 ・経済学者への処方箋 ・経済学者は謝ったら死ぬのか 自然科学のフリをする経済学 例えば、経済学者が説明するグラフやモデルだ。 数式やパラメーターが出てくるので、自然科学の体(てい)を成しているように見える。パラメーターを

    経済学はどこまで信用できるのか『経済学のどこが問題なのか』
  • 惚れる言葉に必ず出会える『エモい古語辞典』

    引用元:朝日広告賞(2021年度)より せつない、うつくしい、はかない、なつかしい……感情が一気に押し寄せ、言葉にするのが間に合わない。そんなときにエモいというのだろう。昔の人が「あはれ」というのと同じかもしれぬ。 古語辞典で「あはれ」をひくと、かわいい、いとしい、なつかしい、尊い……など、「感動を覚えて自然に発する叫びから生まれた語」とある。推しが尊すぎてしんどくて言葉を失うほど心が揺さぶられるのを略して「語彙力……ッ」と叫ぶときもあるが、根っこは同じだろう。 そういう、エモい、あはれな言葉に出会える辞典がこれだ。 もともと、小説やマンガ、歌詞など創作のために古語を厳選したのだが、パラパラと見ているだけで、胸をうずかせ、心を揺らす言葉が見つかる。まるで宝石箱のような辞典なり。 たとえば、「可惜夜(あたらよ)」という言葉を知った。 「可惜」は、惜しいとかもったいないという意味はなんとなく知

    惚れる言葉に必ず出会える『エモい古語辞典』
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    agrisearch 2022/11/07
    「不悪口(ふあっく)」
  • 料理観を揺さぶり、変化させる『料理の意味とその手立て』

    自炊歴も30年になると、料理も適当になってくる。 テキトーという意味ではなく、あり合わせのものでなんかするイメージ。レシピ通りに作らないし、調味料も目分量になる。代わりに、費と洗い物の最小化を目指したり、極限までサボったり、変わった料理に挑戦したりする。 自分の中で、「料理とはこんなもの」という料理観みたいなものが出来上がっている。そのため、普通のレシピは、レパートリーを増やすためにチラ見する程度になる。 一方で、私の料理観を揺さぶり、変化させるようなもある。何気なくやってた一手間が、実は深い意味を持っていたり、伝統&科学に裏打ちされた質が見えてきたりする。 ウー・ウェン著『料理の意味とその手立て』が、まさにそんな一冊だ。 中国家庭料理を紹介しているのだが、いわゆるレシピ集というよりも、料理についての考え方をまとめたエッセイと言ったほうがしっくりくる。料理する人には見慣れたことかもし

    料理観を揺さぶり、変化させる『料理の意味とその手立て』
  • 宇宙、生命、心と進化を一気通貫に語る『時間の終わりまで』

    新卒が「一生やりたい仕事が見つかった」というのは、離乳が終わったばかりの2歳児の「カレーの王子様は世界で一番おいしいべ物である」と同じぐらい説得力がない(※) 人が真顔であるほど、微笑ましい。自分の知る狭い世界でもって、それが全てであると言い切ることに無理がある。新しい仕事カレーマルシェに出会って、世界が拡張されることを願う。 物理学に触れるようになって、同じ可笑しみを抱くようになった。 原子や中性子、クォークなど、どんなに小さいモデルを考えても、それだけでは説明しきれず、これまでの研究と矛盾する現象が生じる。 より巨大な望遠鏡を作り出し、宇宙の果てまで見渡そうとしても、私たちが知る宇宙とは、光が届く範囲でしか観測できない。 それにもかかわらず、現代の物理学でもって、物質や宇宙の全てがそうなっていると結論づけるのは、早すぎる一般化ではないだろうか。 「いやいや、素粒子論は何千回もの

    宇宙、生命、心と進化を一気通貫に語る『時間の終わりまで』
  • 歴史認識をアップデートする『世界史の考え方』

    歴史を学ぶ意義について、物理学の教授と話したことがある。 歴史とは、過去を扱う学問だ 過去は既に確定しており、覆ることはない 新たな史料が発見され、史実が変わることは滅多にない だから、歴史を学ぶことは、昔の出来事を覚える作業になる。過去は確定しているから、教科書はほとんど変わらない―――そう教授は断言した。 「過去は変えられない、確定した出来事だ」という一言は妙に刺さり、なるほどなぁと納得したことを覚えている。 しかし、世界史を学びなおし、最近の教科書を読み直してみると、これは誤っていることが分かった。「過去は変えられない」は正しいが、「過去に対する認識」は変化するからだ。 現代は「平和な時代」か? 例えば、次の文を読んでみよう。 長い歳月のあいだに人間の暴力は減少し、今日、私たちは人類史上、最も平和な時代に暮らしている スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』の主張で、かつては、頷いた方

    歴史認識をアップデートする『世界史の考え方』
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    agrisearch 2022/05/02
    「川北稔『砂糖の世界史』。砂糖、茶、コーヒー、チョコレートといった「世界商品」を手がかりに世界史を読み解き」
  • 文明と穀物の深い関係『反穀物の人類史』

    人類は、狩猟採集から農耕牧畜へと進歩した。 穀物による安定した糧生産が人々の健康を増進し、余暇を生み、文字や文明を育んでいった。文明を狙う野蛮人は、狩猟採集のままの生活で、文字を持たぬ遅れた未開の人々だった。 ……と思っている? だったら『反穀物の人類史』をお薦めする。 著者はジェームズ・C・スコット、イェール大学の人類学部教授だ。メソポタミア、秦・漢、エジプト、ギリシア、ローマなど、文明の初期状態を検証することで、わたしが刷り込まれてきた「常識」に疑義を投げかける。 狩猟採集の方が豊かだった まず、農耕社会が豊かだったというのは誤りだということが分かる。少なくとも、初期の農業は酷いもので、反対に豊かで多様性に富んでいたのは狩猟採集の人々になる。 その証拠として、残されている農民の骨格を、同時期に近隣で暮らしていた狩猟採集民と比較する。 すると、狩猟採集民の身長が、平均で5センチ以上も高

    文明と穀物の深い関係『反穀物の人類史』
  • 「科学」と「正義」を混同すると、たいてい地獄ができあがる『禍いの科学』

    アヘン、マーガリン、優生学、ロボトミーなど、科学的に正しかった禍(わざわ)いが、7章にわたって紹介されている。あたりまえだった「常識」を揺るがせにくる。 ヒトラーの優生学 たとえば、アドルフ・ヒトラーの優生学。 劣悪な人種を排除すれば、ドイツを「純化」できると信じ、ユダヤ人を虐殺したことはあまりにも有名だ。 だが、ガス室へ送り込まれたのは、ユダヤ人だけではない。うつ病、知的障害、てんかん、同性愛者など、医者が「生きるに値しない」と選別した人々が、収容所に送り込まれ、積極的に安楽死させられていった(『ナチスドイツと障害者「安楽死」計画』が詳しい)。 『禍いの科学』によると、ナチスの優生学は、ヒトラー自身が編み出したものではないという。出所は、『偉大な人種の消滅』という一冊ので、ヒトラーが読みふけり、「このは、私にとっての聖書だ」とまで述べたという。 『偉大な人種の消滅』はマディソン・グラ

    「科学」と「正義」を混同すると、たいてい地獄ができあがる『禍いの科学』
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    agrisearch 2021/01/11
    「レイチェル・カーソンの欺瞞」という話も今更。https://ja.m.wikipedia.org/wiki/沈黙の春
  • 「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由

    世界文学全集を編むなら、日本代表は誰になる? 漱石? 春樹? 今なら葉子? 審査は、世界選手権の予選のようになるのだろうか。投票で一定の評価を得た著者なり作品が、トーナメントを勝ち抜いて、これぞ日本代表としてエントリーするのだろうか。 スポーツならいざ知らず、残念ながら、文学だと違う。春樹や葉子ならまだしも、夏目漱石は予選落ちである。 なぜか? 『「世界文学」はつくられる』に、その理由がある。近代日語の礎を築いたことで誉れ高い漱石でも、世界的に見た場合、西洋文学のコピーとして低く評価されているという。 「世界文学」での漱石 『坊ちゃん』『』が有名だし、教科書で『こころ』を読んだ人もいるだろう。何と言っても千円札の顔だから、諭吉よりは見慣れている。やたら有難がる人もいるのは、ザイアンス単純接触効果じゃね? と思うのだが、彼の造語とされる「沢山」「反射」「価値」「電力」は、人口に膾炙してい

    「世界文学」の日本代表が夏目漱石ではなく樋口一葉である理由
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    agrisearch 2020/11/09
    「これに多様性を加える必要がある…世界文学では、「ヨーロッパ」「古典」「白人男性作家」が多数を占める。バランスを取るために、「非ヨーロッパ」「女性作家」「マイノリティ」を選ぶ必要が出てくる」
  • なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』

    桃井かおり「世の中、バカが多くて疲れません?」から30年、バカはどんどん増えている。 バカは、激しく自己主張する。 感情的にわめきたて、他人の意見に聞く耳を持たない。ことが起きるたびに「ほら、私が言った通りだろ?」と叫ぶ。思い通りにならないと、全て人にせいにして、自分が間違っている可能性を考えない。自分を高く評価するあまり、客観的な判断ができない。 バカは、「間違えたら死ぬ病」にかかっている。 自分の間違いを、絶対に認めようとしない。自分の間違いが証明されそうになると、ゴールポストを動かす。都合の悪いことを完全に忘れる能力があり、「昔は良かったが、今はダメだ」を口癖とする。 「バカ=知識がない」ではない。 知識はあり、アカデミックな立場にいるにもかかわらず、信じがたい愚かな発言を繰り返すバカは、大量にいる。しかも、なまじ知識があるぶん厄介だ。自分のイデオロギーを裏付ける文献を引用しながら、

    なぜバカは無敵で世の中に蔓延しているのか分かる『バカの研究』
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    agrisearch 2020/10/25
    「ダニング=クルーガー効果」「バカだと思っていた私自身が、バイアスまみれの思考に陥っていることが暴かれる」
  • きれいは汚い、汚いはきれい『不潔の歴史』

    歴史上、いちばん不潔な信徒は、次のうちのどれか。 キリスト教徒 イスラム教徒 ユダヤ教徒 『不潔の歴史』によると、史上最も不潔なのは、キリスト教徒だという。ホント!? 入信の際の洗礼のイメージから、きれい好きと思っていたが、違うらしい。 たとえば、イエスを事に招いたファリサイ派の人は、イエスが前に身体を清めなかったことに慄いたとある(ルカ11:37-54)。さらに、「あなたたち(ファリサイ派)は、杯や皿の外側はきれいにするが、その内側は強欲と悪意に満ちている(ルカ11:39)」と非難されている。 外見よりも内面を重視するエピソードだろうと思っていたが、これを真に受けて、わざと汚れたままでいることが、4~5世紀のキリスト教徒に流行したとある。手記や小説などで、キリスト教徒の汚さは相当なものだと紹介されている。 一方、ユダヤ教徒やイスラム教徒は、清潔でいることが宗教上の要求としてルール化さ

    きれいは汚い、汚いはきれい『不潔の歴史』
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    agrisearch 2020/09/14
    「周囲がしているから、するのが「普通」だから、マスクをする―――こういう風に、衛生観念は育っていくのかもしれぬ」
  • 「おいしい!」と感じるとき、何が起きているのか『味覚と嗜好のサイエンス』

    「味」は信号だが、「おいしい」は経験だ。 味覚というものは、べ物が体に入ってくる時に最初に感じるセンサーの役割になる。甘味はエネルギー源となる糖、塩味はミネラル、うま味はタンパク質、酸味や苦味は腐敗物の存在を感知する。 では、塩何パーセント、砂糖何グラムといった味覚が最適化されれば、自動的に「おいしい」になるわけではない。料理の見た目やにおい、口に入れたときの感やのどごし、風味の全てで、わたしたちは味わう。 さらに、昔からべ慣れているかも含め、いまの体感と過去に学習してきた記憶を総動員して、「おいしい」と感じる。ふだんの生活で見過ごされがちだが、「おいしい」とは、結構複雑な結果なのだ。 書は、この味覚と「おいしい」を手がかりに、べるとは何かを探求したもの。 家系ラーメンがおいしい理由は、モルヒネと同じ 最も興味深かったのが、「油」の存在だ。料理に不可欠で、かつおいしくさせる油脂

    「おいしい!」と感じるとき、何が起きているのか『味覚と嗜好のサイエンス』
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    agrisearch 2020/09/14
    前に読んだ。「その地域での食文化によって、好みが学習される。食べ慣れたものを好ましく感じるのは、「食べたことがある」という味覚や風味は、食の安全の信号だからだという」
  • 「美しさ」のサイエンス『美の起源』

    多くの方が、直感で式①を選ぶだろう。正解だ。 式①の[オイラーの等式]が、世界で一番美しいとされる。ちなみに、式②の[ラマヌジャンの無限級数]は、最も醜いとされる数式だという。 最も美しい数式を探す実験は、認知科学者のセミール・ゼキが行った。 まずゼキは、fMRI装置を用いて、美しいと感じている人の脳の活性化している部位を特定した。美しい絵画を鑑賞する人の脳のうち、眼窩前頭皮質が活性化するという(*1) 。眼窩前頭皮質は、ちょうど眼球のソケットにあたる箇所に接している部分になる。 次にゼキは、数学者の協力を得て、多くの数式の中から、最も美しいと感じるものを選んでもらい、そのときの眼窩前頭皮質の状態を測定した。予想通り、美しい数式を見るとき、この部分の活性化が認められたという(*2)。数学的な美しさは、シンプルさなのかと考えると、興味深い。 問題:次の①と②のうち、どちらが美しいと評価される

    「美しさ」のサイエンス『美の起源』
  • フェイク歴史を言ったもの勝ちになるいま、『なぜ歴史を学ぶのか』

    フェイクニュースがまかり通り、「真実」が希釈化されるいま、歴史学は何ができるのか? この疑問に答える手がかりは、アメリカ歴史学者リン・ハントが著した書にある。 著者はまず、歴史政治化という問題について、具体的に説き起こす。 ホロコーストを否認するメリット たとえば、ホロコーストの否認だ。ナチス・ドイツが組織的に行った大量虐殺を「なかった」ことにする。それも、SNSや思想団体というレベルではなく、政府高官レベルでホロコーストを否認するところもあるという。 2005年12月、イランのアフマディネジャド大統領は、ホロコーストを「創り出された神話」だと発言した(※1)。ただし、核計画に対する国連の制裁を懸念し、イラン公式の報道機関は、この発言が最初からなかったかのように録画から取り除いている。 一つの歴史的事実について、なぜこのように発言するか。 それは、反イスラエル政策の一環として有効だと

    フェイク歴史を言ったもの勝ちになるいま、『なぜ歴史を学ぶのか』
  • 宇宙の果てから素粒子の奥への旅『ズームイン・ユニバース』

    極大の世界で「果てしない宇宙」というが、観測可能な宇宙には果てがある。それは、ここから1027m先になる。これより向こうは、観測できないため、あるとかないとか分からない。ゼロを並べるとこうだ。 1,000,000,000,000,000,000,000,000,000m いっぽう、極小の世界だと、人類の想像の限界のサイズになる。それは、10-35m)の「場」に満ちた世界になる。これより奥は、理論で説明できる範囲外となる。ゼロを並べるとこうだ。 100,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000 分の1m 「いま・ここ」から究極にまで遠ざかった場所から、限りなく近づいた世界まで、極大~極小を一冊にまとめたのが書だ。ページを開くと、宇宙の果てから出発し、1/10ずつスケールダウンしながら、近づいてゆく。 極大から極小への旅 最初は、すごいスピードだ

    宇宙の果てから素粒子の奥への旅『ズームイン・ユニバース』
  • おっぱいに(科学的に)興味がある人必読 『哺乳類誕生』

    おっぱいとは何か? この問いに対し、人文科学からたどったのが『乳房論』だ。絵画、文学、宗教、政治ファッション、医療、ポルノの斬り口から、[乳房をめぐる欲望の歴史]を描き出している。 いっぽう、自然科学からたどったのが書『哺乳類誕生』だ。遺伝学、分子生物学、獣医学、生物工学、古生物学の斬り口から、乳房に至る進化の歴史を描き出している。 おっぱいで子どもを育てる哺乳類は、どのようにおっぱいを獲得したのか。乳はどのように発達し、どういったメカニズムで出て、生命維持にどのような役割があるのかなど、おっぱいの質を学ぶことができる。 ワクワクしながらページを開く。第一章は「生命誕生」。 そこからか! おっぱいまでの進化 遺伝子と有性生殖の仕組みを語り、アミノ酸から原生動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に至るまでの進化を丹念に振り返る。これが半分以上を占めており、なかなかおっぱいにたどり着け

    おっぱいに(科学的に)興味がある人必読 『哺乳類誕生』
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    agrisearch 2020/02/17
    「細胞膜を内側から押し上げ、細胞膜に包まれた状態(脂肪球)となって乳に移る。細胞膜そのものは水に混ざりやすい性質を持っているため、脂肪滴も親水性物質として振舞えるというのだ」