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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (8)

  • ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』

    人はミスをする。これは当たり前のことだ。 だからミスしないように準備をするし、仮にミスしたとしても、トラブルにならないように防護策を立てておく。人命に関わるような重大なトラブルになるのであれば、対策は何重にもなるだろう。 個人的なミスが、ただ一つの「原因→結果」として重大な事故に直結したなら分かりやすいが、現実としてありえない。ミスを事故に至らしめた連鎖や、それを生み出した背景を無視して、「個人」を糾弾することは公正なのか? 例えば、米国における医療ミスによる死亡者数は、年間40万人以上と推計されている(※1)。イギリスでは年間3万4千人もの患者がヒューマンエラーによって死亡している(※2)。 回避できたにもかかわらず死亡させた原因として、誤診や投薬ミス、手術中の外傷、手術部位の取り違え、輸血ミス、術後合併症など多岐にわたる。数字だけで見るならば、米国の三大死因は、「心疾患」「がん」そして

    ミスを責めるとミスが増え、自己正当化がミスを再発する『失敗の科学』
    gazi4
    gazi4 2024/01/07
  • 時を忘れる小説

    大きな現実の前では、文学はつくづく無力だな。 そも文学は人と人との間学(あいだがく)なのだから、人を超える圧倒的な事物には、術がない。しかし、言葉が人に対して影響をもつものなら、それがいかに微かであろうとも、その力を信じる。わたしは、物語の力を、信じる。 このエントリでは、時を忘れる夢中小説、徹夜小説を選んでみた。計画停電でテレビや電車が動かないとき、開いてみるといいかも。amazonからは書影のみお借りして、リンクはしていない。自分の書棚か、営業してる屋を巡ろう。文庫で、手に入り安そうなもので、かつ面白さ鉄板モノばかり選んだ。いま手に入りにくいのであれば、手に取れるようになったときの「おたのしみリスト」として期待してくださいませ。 ■大聖堂(ケン・フォレット、ソフトバンククリエイティブ) 十二世紀のイングランドを舞台に、幾多の人々の波瀾万丈の物語……とamazon評でまとめきれないぐら

    時を忘れる小説
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    gazi4 2022/11/24
  • 辺境と文明が逆転する『遊牧民から見た世界史』

    中国がなぜ中国かというと、世界の中心を意味するから。 中国皇帝が世界の真ん中にあり、朝廷の文化と思想が最高の価値を持ち、周辺に行くにつれ程度が低くなり、辺境より先は蛮族として卑しむ華夷思想が根底にある[Wikipedia:中華思想]。 しかし、蛮族とされている遊牧民から見ると、舞台はユーラシア全体となる。遊牧生活によって培われた軍事力で圧倒し、スキタイ、匈奴の時代から、鮮卑、突厥、モンゴル帝国を経て、大陸全域の歴史に関わる。中心と周辺が反転し、中華は一地域になる。 視点を反転することで、いままで「常識」だと考えてきたことが揺らぎ、再考せざるを得なくなる。歴史を複眼的に眺めるダイナミズムが面白い。『遊牧民から見た世界史』は、その手がかりを与えてくれる。 「モンゴル残酷論」の誤り たとえば、「モンゴル残酷論」これは誤りだとする。 モンゴル帝国といえば、暴力、破壊、殺戮というイメージが付きまとう

    辺境と文明が逆転する『遊牧民から見た世界史』
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    gazi4 2020/08/24
  • 『舞踏会へ向かう三人の農夫』はスゴ本

    「スゴ=すごい」とは、読む前と読んだ後で、自分自身が更新されることである。世界を見る目がアップデートされ、同じだったはずのものが、まるで別の存在になる。「当の旅の発見は新しい風景をみることではなく、新しい目をもつことにある」とプルーストは言ったが、この傑作を読むことこそが旅であり新しい目を持つことである。 純粋に小説を読む悦びと、全く新しい経験をくぐる濃密さ、そして世界と一体化するというある種の恐怖を味わう。知ることは関わりあいになることであり、すなわち、世界と自分を再定義する行為なのだ。 この小説の面白さ=立体視 この凄さ、伝えるのは難しい。 3つのストーリーラインが互いに絡み合い混ざり合い、微妙に重なり/ズレながら浮かび上がる立体感や、ウロボロスの蛇のように一つのナラティブが物語を呑み込む再帰性、さらには、読むという行為のなかで自分を書き換えていく双方向的な感覚など、どれか一つで

    『舞踏会へ向かう三人の農夫』はスゴ本
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    gazi4 2018/08/17
  • 「嘘と虚構」を考える

    明日のスゴオフは「嘘と虚構」がテーマ(なんとタイムリーな!)。嘘を嘘と見抜けないと難しいのは、ネットに限らない。中の人が信じるあまり、演じる自覚が無くなってしまい、ただの詐欺やペテンを超えて、ニュースを受け取る「外の人」を巻き込んでいるのが新しい。スゴオフに先立ち、わたしが選ぶ「嘘と虚構」のをご紹介。 まず小説小説は全てフィクションなので「あらゆる小説」が俎上に上る。そこから一歩歪めてメタ視線から小説を捉えなおすと、「小説が語る嘘」が見えてくる。ボルヘスは架空の書物がすでに存在すると見せかけて、要約や注釈を差し出せとアドバイスする。スタニスワフ・レムは具体化して、存在しない書評集『完全な真空』、そして存在しない作品の序文集『虚数』を著す。 なにしろ架空のだから、何だって創造(想像)できてしまう。そもそも小説として成立しなくても、その書評という形態なら示すことができる。例えば『

    「嘘と虚構」を考える
    gazi4
    gazi4 2014/05/23
  • コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』

    「嘘つきは経済学者の始まり」という諺があるが、コンサルタントも入れるべき。 中の人として働いたことがあるので、その手法は分かってる(まとめ:[そろそろコンサルタントについて一言いっておくか])。だから書は、徹頭徹尾、黒い笑いが止まらない。騙される幹部が悪いのだが、振り回される社員はたまったものではない。ファームであれジコケーハツであれ、理論武装を「外」に求める人は、予習しておこう。あるいは、コンサルティングを「説得の技術」と捉え、逆にそこから学ぼう。 書は、マジシャンが種明かしするようなもの。コンサルタントの方法論である「適応戦略」や「最適化プロセス」「業績管理システム」は、役に立たないどころか、悪影響にもなると暴きたてる。著者は経営コンサル業界で30年も働いて、いいかげんこの「お芝居」にウンザリして、懺悔の名を借りた曝露を出したという。その具体例が生々しい&おぞましい&あるある。

    コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』
    gazi4
    gazi4 2014/04/23
    "金で雇う代わりに考えてもらったり、代弁してもらうような無脳な経営者なら、コンサルタントにかかわらず会社を潰すだろうね"
  • 行為の哲学『それは私がしたことなのか』

    安全運転していたのに、飛び出してきた子どもを轢いてしまったとしよう。 自責の念に押しつぶされそうになりながら、「あのときもっと注意していれば」と後悔する。親しい友人が、「運が悪かったのだ、いつまでも悩んでもしょうがない」と慰める。このとき、「そうだね、ボクのせいじゃないよね」とケロリと気持ちを切り替えたなら、その友人は不審に思うだろう。 なぜか? これを解き(説き)明かす行為論が熱い。ヴィトゲンシュタインから始まり、心脳問題を俎上に乗せ、認知科学に代表される精神を物質に還元しようとする考えに真っ向から反論する。後半は「過失という行為」を深堀りすることで、カントに代表される合理主義的哲学が覆い隠そうとしている、義務や責任と運との緊張関係を暴きだす。 前半を「心の哲学」に割き、物心二元論を批判するライルの議論や行動主義、決定論、リベットの実験やミルグラム実験などを通じて、行為の哲学を手際よく紹

    行為の哲学『それは私がしたことなのか』
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    gazi4 2013/11/13
  • 数学は正しいか『数学の想像力』

    数学の「正しさ」について、ぎりぎり迫った一冊。 何によって数学的な「正しさ」を認識するのか、その根拠とでもいうべきもの、正しさの深層にあるものを掘り起こす。 書の結論はこうだ。数学の正しさの「規準」は明快だが、正しさの「根拠」は極めて非自明である。そもそも「正しさ」に根拠などというものがあるのか?この疑問への明快な解には至らないにせよ、そこへのアプローチにより、数学の「正しさ」が少しも自明ではないこと、そしてその非自明性が数学を柔軟性に富んだものにしている―――この結論のみならず、そこへ至る議論の数々が、読み手に知的な揺さぶりをかけてくる。数学の正しさを疑わない人には、頭にガツンと一撃を喰わされる。 もちろん数学は「正しい」。[Wikipedia]によると、数学とは「いくつかの仮定から始めて、決められた演繹的推論を進めることで得られる事実(定理)のみからなる体系の研究」である。そこにおけ

    数学は正しいか『数学の想像力』
    gazi4
    gazi4 2013/07/19
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