最近気になる声がある。「最近の広告にはわいせつ物が増えた。けしからん」という声である。この声は非常に危険である。 なぜ危険なのかというと、我が国では、刑法175条により、わいせつ物の頒布や陳列、頒布や陳列を目的とした所持は違法だからだ。 過去にも多数の芸術作品が、わいせつであるとして不当に撤去され、作者は罰せられている。実に、我が国は表現の自由を有せざる劣等国である。表現の自由が認められない世界では、思想の自由もなくなる。 したがって、我々はわいせつ性の判定に、もっと慎重になるべきである。なぜならば、一度わいせつ性が認められるや、その表現は違法になるからだ。表現を規制する法律を動かす便利な理由を自ら作り出しているのである。 さて、件の広告とやらは如何。幸い、あの有名な高木浩光氏が、スクリーンショット付きで実例を上げている。 togetter をスマホで見ると、常にこの手の広告。もうtoge
■ 追跡されない自由を奪う技術を肯定的に捉えた珍しい学術論文の例 行動ターゲティング広告がオプトアウト方式で概ね許容されてきたのにはいくつかの理由がある*1が、その一つは、cookieはいつでも消去することができ、閲覧者側で追跡から逃れることができるからというものであった。実際、行動ターゲティング広告を展開している事業者は、そのようなエクスキューズ*2をしていることが多い。 しかし、cookieを消しても、ブラウザの特徴的な挙動、たとえば、User-Agentが特殊なものであったり、利用しているプラグインのリストなどから、ある程度の確率で閲覧者を追跡できてしまうことが、研究成果として発表された例がある。 Peter Eckersley (Electronic Frontier Foundation), How Unique Is Your Web Browser?, Proceedings
■ Wi-FiのMACアドレスはもはや住所と考えるしかない 目次 まえがき これまでの経緯 2つのMACアドレスで自宅の場所を特定される場合 SSIDに「_nomap」でオプトアウト? PlaceEngineはどうなった? まえがき 先週、以下の件が話題になった。 Greater choice for wireless access point owners, Official Google Blog, 2011年11月14日 Removing your Wi-Fi network from Google's map, CNET News, 2011年11月14日 グーグル、Wi-Fiネットワークの位置情報収集で対応策を公開, CNET Japan, 2011年11月16日 Google's WiFi Opt-Out Process Makes Users Navigate Technic
では、この「利用規約を見る」ボタンを押せば、「端末情報を取得します」というのが何であるのかが、わかるようになっているのだろうか。 このボタンを押すと、Webブラウザが開くようになっており、表示されるのは以下のWebページであった。 セカイカメラ サービス利用規約, セカイカメラ サポートセンター このページの内容をくまなく見てみたが、どこにも「端末情報」という文字列は存在しないし、「UDID」の文字列もなければ、「端末識別」という文字列もない。内容的にUDIDに関係しそうなところを探して*5も、次の記述しか存在しない。 8. プライバシー 8.1 登録ユーザーが当社に届け出る情報および当社が取得したユーザーに関する情報は、当社が別途本サービスにおいて掲示するプライバシーポリシーに従って取り扱われるものとし、ユーザーは、かかるプライバシーポリシーに基づく個人情報の取扱いにつき同意するものとし
■ 2ちゃんねるが日本のインターネット終了の引き金を引くか 一昨年、 日本のインターネットが終了する日, 2008年7月10日の日記 これを書いたとき、ケータイから一般のインターネット端末へと青少年の使用端末が移行するであろう近い将来、青少年ネット規制法の改正によって、日本のインターネットが強制終了となるというシナリオを想定した。スマートフォンが開花しつつある今、その運命の分かれ目は間近に迫っている。 そういう岐路に立たされている今、一昨日の日記「ケータイIDに添えて年齢情報も送信されるようになる?」に書いたように、青少年の保護を口実に、年齢情報までインターネット接続事業者に送信させようという動きが出てきている。総務省研究会の提言案自身が述べているように、悪いことをしようとする者を排除することはできないわけで、いくらかハードルを上げることで悪事のコストを高めることはできるだろうけども、それ
■ 米空港でBluetoothによる乗客の行動追跡へという報道 「Mutual認証」のメンバーとIETFで米国に来ているのだが、ホテルの部屋に配達された昨日の新聞、USA TODAY紙の1面に、こんな記事が載っていた。 Airport device follows fliers' phones - TSA says one goal is to track wait times in security lines 内容を要約すると、米国TSA(国土安全保障省運輸保安局)が、空港の手荷物検査の行列の待ち時間を測定する目的で、人々の携帯電話などから発信されているBluetoothのMACアドレスを観測することを検討しているというもの。 BluetoothのMACアドレス観測で何ができるかは、1年前の日記「Bluetoothで山手線の乗降パターンを追跡してみた」に書いたとおりで、過去にも類似の目
■ 「iモードIDは取得していません」バナー、どうぞご利用ください。 先日の日記、 NTTレゾナントから docomo IDについて回答「ドコレキでは、iモードIDの取得はしていないし、今後も取得する予定はない」, 2010年3月13日の日記 の動向を踏まえ、「iモードIDは取得していません」バナーを作成しました。著作権はありません。改変も含め、ご自由に複製してお使いください。 「docomo ID」のOpenID機能を利用する際に、「docomo IDでログイン」ボタンの下や上に設置するバージョンを用意しています。*1 また、「docomo ID」とは無関係に、あらゆるWebサイトで、iモードIDの取得を行っていないことを宣言する際に使えるバージョンとして、以下の画像を用意しました。 どうぞご利用ください。 NTTドコモのiモードに限らず、auのEZ番号や、ソフトバンクモバイルやイーモバ
■ なぜ一流企業はhttpsでの閲覧をさせないようにするのか 「かんたんログイン」などという似非認証方式は、たとえIPアドレス制限を実装したとしても安全でない。仕様が公開されていないからという点の他に、技術的な理由として、少なくとも次の2つがある。 「IPアドレス帯域」と俗称される重要情報が安全に配布されていない。 SSLを必要とするケータイサイトでは、通信経路上の攻撃によってなりすましログインされてしまう。*1 2番目には解決策がない。 1番目については解決策はあるだろうが、携帯電話事業者がサボタージュしていて、実現される見通しがない。これについては、2008年7月27日の日記にも書いたが、その後どうなったかを調べてみたところ、ソフトバンクモバイル以外は、何ら改善されておらず、当時のままだった。 NTTドコモ 「iモードセンタのIPアドレス帯域」のページをhttps:// でアクセスする
■ なぜGoogleストリートビューカメラ問題は嘘がまかりとおるのか 先月、日本弁護士連合会(日弁連)が、ストリートビューに関する意見書を発表しており、これについての記者会見が先日あったようで、ちらほら報道があった。 多数の人物・家屋等を映し出すインターネット上の地図検索 システムに関する意見書, 日本弁護士連合会, 2010年1月22日 第1 意見の趣旨 1 (略)行政機関から独立した第三者機関によるプライバシー影響評価手続を経ることがない現状において,新たな地域への拡大は控えられるべきである。すでに公開されている地域においては,当該自治体の個人情報保護審議会において,下記の2(2)と同様の事後調査がなされるべきであり,その判断は尊重されるべきである。 2 個人情報保護法,個人情報保護条例において,以下の改正がなされるべきであり,その改正までの間も,以下の運用改善がなされるべきである。
高木浩光@自宅の日記を見た。 判決後、金子元助手は(中略)と話した。(中略)「ソフトウエアは万能ではない。ユーザーがソフトをどう使うかは自由だが、ちゃんと使っていただきたい。あまり迷惑をかけていただかない方が助かる」。違法コピーが横行するネット社会については、こう語った。 朝日新聞2009年10月8日夕刊 「迷惑をかけないようちゃんと使っていただきたい」とのことだが、どうやったら「ちゃんと」、つまり、合法に使えるというのだろう? BitTorrentやLimeWireならば、利用者の意思で合法に使うことができる。しかし、Winnyの場合は、Winnyネットワークに参加している全員が合法に使用しない限り、誰も合法に使うことができない構造に設計されている。 違法な送信を行うものが違法であるとしても、情を知らずに中継に提供した場合が違法になるわけではない。誰も合法に使うことができないというのは誤
■ 日記予定、Nyzillaの進捗 「Winny作者事件二審無罪判決で今後どうなるか」といったエントリを書かなくてはと思っていたが、まだ書いていない。書きたいのは次の点など。 判決を伝える新聞各紙の論調がもたらしかねない今後への悪影響。 朝日新聞10月8日夕刊大阪3版掲載の安田直氏の有識者コメントに見る典型的な害。 私の新聞コメントについて。 金子氏の発言内容が以前から変わってきている件。 (金子氏発言に依拠すると)私たち(利用者、開発者)はどうするべきなのか。 金子氏に望むこと。 高裁の判決理由についての考察(判決要旨を基にして)。 ところで、開発中の「Nyzilla」は、かなり開発が進み、残すところあと1つを実装すれば、機能的には完成といったところとなった。 最初の接続時には注意書きが出る。*1 このプログラムは、いわゆる「クローラ」ではなく、アドレスバーの「接続先」に入力されたホスト
■ MIAUについての所感 前々回の日記でMIAUの中川理事のTwitter発言に触れて以来、MIAUについて、はてなブックマークで小さなコメントを書いていたところ、MIAU側で反応があり、MIAUからの公式発表とインタビュー記事が出た。 「インターネット地図情報サービスWG」第一次提言(案)作成協力のご報告, MIAU, 2009年8月3日 インターネット・ユーザーの声を政策の争点にしたい - インタビュー, 日経ITPro, 2009年8月7日 これをベースに、MIAUについての感想を書いてみる。 日経ITProのインタビュー記事の冒頭と終盤で津田大介代表理事が述べているように、審議会が市民参加に配慮しようにも「代表がいないから呼べない」という問題が存在していて、それに応じられる団体としてのMIAUの役割は重要であり、特に、ある時期の著作権関連の審議会において大きな役割を果たしたことに
■ 故意による放流と過失による流出、Winnyにおける拡散速度の比較 昨年11月に話題になった、日本IBMの開発委託先従業員からのWinnyネットワークへの個人情報流出事件に、新たな事態が生じたようで、木曜から金曜にかけて報道が相次いだ。 Winnyネットワークで:神奈川の個人情報流出、規模は2000人から約11万人に, ITmedia, 2009年1月8日16時22分 神奈川県立高校の生徒情報、Winny上に再放流? 11万人分を確認, INTERNET Watch, 2009年1月8日18時41分 県立高全11万人の情報流出 神奈川、口座変更を依頼へ, 朝日新聞, 2009年1月8日22時40分 11万人の個人情報、再流出?削除要請にソフト変え…神奈川, 読売新聞, 2009年1月8日23時47分 事の流れは、最初にWinnyネットワーク上に流出した(7月ごろ)ものが、Winnyネット
■ 「日本のインターネットが終了する日」あとがき 10日の日記「日本のインターネットが終了する日」には、書ききれなかったことがある。また、頂いた反応を踏まえて追記しておきたいこともある。 青少年は結局どうすればいいのか はてなブックマークのコメントに、「本当に知らなければいけない人には理解されないかと思うとね・・・哀しくなってくる」という声があった。リンク元のどこだったかには、「肝心の子供たちにはどう説明したらいいんだ」というような声もあったと思う。 契約者固有IDの送信を止める設定をしてしまえば、モバゲータウンや魔法のiらんどなどが使えなくなってしまう。設定をアクセス先毎に変更しながら使うという方法もあり得るが、子供たちにそれをさせるのは無理な話だろう。保護者としては、確実に安全に使える設定を施した上で電話を子供に渡したいはずだ。「住所氏名は入れちゃ駄目」というのは、これまでも子供たちに
自宅の高木さんが携帯やWebの固有IDの問題について日記エントリーの大作を完成された。 私も白浜での議論の場にいた一人であり大変興味深く読ませていただいた。 当日の議論より疑問のまま残っていて結局この日記のエントリーでも明らかにならなかったのは、 1 携帯で固有IDを送信するようになるとパソコンでも同様のことが行われるようになるということの信憑性 (さすがにそれは現実的に起こり得ないんじゃないとか。また楽観的すぎると怒られそうだけど。) 2 仮に上記の状況が実現したとして「実際どんな被害が出るの?」という疑問 (問題の大きさを理解する上で。) 高木さんは「実際どんな被害が出たの?」という質問があったように書いているけど、このときの質問は「実際どんな被害が出る」(と想定される)?という質問だった。被害が出ないから問題がないということを言っているのではなくて、想定される被害を明らかにすることで
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