東京へ、東京へと人がおしよせてくるので土地の値段がめちゃくちゃにあがっている。練馬のお百姓さんとなると、十億、二十億になるという。みんなどんどん転業して、社長になり経営者になっている。しかし、話を聞いた七人のうち、一人だけ今も変わらずに、キャベツを作り続けている三十一歳の若者がいた・・・(「練馬のお百姓大尽」)。 動物園はどうしてこう悲しいのだろう。とりわけ心が疲れているときは・・・。獣医や飼育員に聞いたところによると、ガラスやコンクリートのなかで、動物がおかしくなっているそうである。不精になり、運動不足で太り、スモッグで肺がまっ黒になってしまう。白鳥がカラスに、白クマが黒クマになり、ペンギンは三日で死に、サルの鼻毛がのびてきた(「上野動物園の悲しみ」)。 「見る」ことは「そのものになる」ことである。昭和39年頃、後の巨匠・開高健が、毎週毎週どこかへ出かけて新しい人と会い、話を聞き、とりと