富岳は「世界一のスーパーコンピューター」として華々しくデビューした。開発プロジェクトを率いたのはソフトウエアの研究者である石川裕だ。京の100倍の実行性能を達成する一方で貫いた理想があった。 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて理化学研究所のスーパーコンピューター富岳の運用が1年前倒しで始まった。新型コロナと戦うため急きょ研究者に提供を開始した富岳だが、2020年7月に早速、京都大学の研究チームが治療薬の候補物質を発見するなど成果を上げている。 先代の京の理論性能を100倍上回るエクサスケールマシン(1秒間に10の18乗回の浮動小数点演算が可能なスパコン)の開発を目指す「フラッグシップ2020プロジェクト」は2014年4月に始まった。プロジェクトを率いたのが理研の石川裕だ。 石川は並列分散システムソフトウエアやクラスターシステムの研究者で、東京大学情報基盤センターに在籍していた。「特殊なも
AI関連の技術が近年著しい発展を見せているのは、コンピュータの計算能力が大幅に上がったからだといわれている。AIの基礎になっているのは機械学習であり、膨大な量の計算処理を通して分類や回帰、予測といったタスクをこなす。 汎用的な計算はCPU、負荷の高い計算処理にはGPU、と一般にはこの2つのプロセッサが知られるが、実は計算処理に関して言えば、大型のスーパーコンピュータに搭載される「ベクトルプロセッサ」が近年にわかに注目を集めている。なぜなら、一般的なデスクトップPCサイズのマシンでも扱えるようになったからだ。 ベクトルプロセッサはAIの処理など、負荷の高い計算処理で他のプロセッサより格段に高い性能を見せる。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、「データは石油」と呼ばれるようにデータから新たなビジネスを生み出せるようになった昨今、マシンの計算能力はビジネスの展開速度に直結する。 ベク
スパコン性能をFlops/Wで評価するGreen500の2020年6月版において、Preferred Networksの「MN-3スパコン」が世界一を獲得した。 例年はGreen500 1位を獲得した記念の賞状授与や、30分程度の授賞プレゼンテーションが行われるのだが、今回はデジタル開催であったこともあり、それらは行われず、Top500、Green500などの発表はあっさりしたものであった。 次の表はGreen500の10位までのデータより必要部分を抜き出したもの。表の後半にあるRmaxがHPLの実行Flops値、POWERはHPL実行時の消費電力で、Power Efficiencyが電力効率である。 2020年6月版Green500の上位10システムのシステム諸元 (出所:Green500 Webサイト) Green500の1位は日本のPreferred NetworksのMN-3という
前回1位だった、富士通と理化学研究所が共同開発したスパコン「富岳」のプロトタイプは4位に。同時に発表された処理性能ランキング「TOP500」などで世界1位を獲得した「富岳」は9位にランクインした。また、PEZY Computing(東京都千代田区)とExaScaler(同)のスパコン「NA-1」も3位に入るなど、日本勢がトップ10の4枠を占める結果となった。 Green500以外のランキングでは、富岳が世界1位を総ナメ。PFNのMN-3と合わせると、日本製のスパコンが全てのランキングで1位を独占したといえる。 関連記事 スーパーコンピュータTop500、「富岳」が日本製として久々の首位奪還 スーパーコンピュータの性能世界ランキイング「TOP500」で、日本の理化学研究所の「富岳」が4部門で首位に立った。Armベースのスパコンが首位に立つのは初だ。 スパコン「富岳」試作機、省エネランキングで
理化学研究所(理研)は23日、神戸・ポートアイランドに整備中のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度ランキング「トップ500」をはじめ、スパコンの計算性能を示す主要4部門で世界1位になったと発表した。トップ500で日本勢が1位となるのは、2011年に2期連続1位になった先代の「京(けい)」以来9年ぶり。初採用の1部門を加え、「4冠」を達成するのは世界のスパコンで初の快挙という。 富岳は富士山の異名で、「京」(19年8月に運用停止)の後継機。計算速度は毎秒41京5530兆回で前回王者の米国のスパコンを大きく引き離した。 国費約1100億円が投じられ、理研と富士通が共同開発し、21年度の本格運用を目指す。理研計算科学研究センターによると、432台の計算機(1台は幅80センチ、奥行き140センチ、高さ220センチ)が並ぶ。既に新型コロナウイルス対策のため、試験運用が始まっている。
ISC 2020はオンラインで開催 例年、ドイツのフランクフルトで開催されるスパコン学会「ISC」は、新型コロナウイルス禍で今年はデジタル開催(オンライン開催)となったのだが、その参加費が無料となることが明らかとなった。 参加登録をしておけば無料で、自宅のパソコンの前に座れば参加できるため、これまでISCに参加できなかった人であっても、気軽に参加できるようになる。 6月6日追記:記事掲載当初、ISC 2020の発表についてはPre Recordedのものであっても、会期後の視聴ができないとしておりましたが、主催者側より、Pre Recordedのコンテンツについては、公開時間以降も見られるようにするという連絡をいただきましたので、当該部分を修正させていただきました(レジストレーションを行っていない場合でもイベントの2週間後より視聴可能) ISC 2020の開催期間は6月22日から6月25日
RISCプロセサを超並列にした日立のSR2001/2201とCP-PACS 1996年6月にNWTに代わってTop500の1位になったのは、東京大学に納入された日立の「SR2201」である。そして1996年11月には、筑波大学/日立の「CP-PACS」がTop500の1位になった。 量子色力学(Quantum Chromo Dynamics)の専用計算マシン「QCD-PAX」を作った実績を持つ筑波大は、1992年から文部省(当時)の予算を獲得し、超並列スパコンの開発に取り組んでおり、メーカー側の開発パートナーとして日立を選択した。 そして、スパコンのCPUは、当時は日立が担いでいたPA-RISCアーキテクチャをベースに、ベクトル演算を支援するハードウェアを付け加える「HARP-1 CPU」を独自に開発した。1994年6月に発表された日立の「SR2001」は、90MHzクロックのHARP-1
富士通は4月22日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の新スーパーコンピュータシステムを受注したと発表した。納入するのは、理化学研究所と富士通が共同開発するスーパーコンピュータ「富岳」の技術を生かしたシステムで、JAXAが持つ現行システムの約5.5倍となる19.4P(ペタ)FLOPSの倍精度(64bit)演算性能を持つ見込み。2020年10月に稼働を始める予定。 JAXAが2016年4月に運用を始めた「JAXA Supercomputer System Generation 2」(富士通製造)の後継システム。富岳と同じ、英Armの命令セットアーキテクチャを採用したCPU「A64FX」を搭載するスパコン「Fujitsu Supercomputer PRIMEHPC FX1000」を5760ノード導入する。大規模な数値シミュレーションの演算や、衛星観測から得られた大規模なデータの解析、AIの計算
印刷する メールで送る テキスト HTML 電子書籍 PDF ダウンロード テキスト 電子書籍 PDF クリップした記事をMyページから読むことができます 気象庁は3月2日、気象研究所(茨城県つくば市)で新スーパーコンピューターシステムが稼働を開始したと発表した。新システムは富士通が構築を手掛け、880ノードでピーク性能は2.81PFLOPSとなっている。 新システムは、富士通製のPCサーバー「FUJITSU Server PRIMERGY CX2550 M5」880台を高速のインターコネクト「Intel Omni-Path Architecture」で並列接続する。総主記憶容量は242TB。並列ファイルシステムは容量が16.5PB、バンド幅は300GB/秒となっている。 GPUなどのアクセラレーターは使わずCPUベースで構成され、幅広いアプリケーションを高性能かつ低消費電力で動作させるこ
エクストリーム−D株式会社 XTREME-Stargate(TM) で利用可能な計算資源としてスーパーコンピュータ「富岳」を選択可能に 理化学研究所が開発主体となって開発・整備を推進しているスーパーコンピュータ「富岳」のクラウド的利用に向けた共同研究プロジェクトとしてXTREME-Stargate(TM)を用いた提案が採択された。XTREME-Stargate(TM)の利用者に対してエクストリーム−Dが提供する計算資源以外に、日本を代表するスーパーコンピュータ「富岳」も選択肢として提供することで幅広いニーズに応えることが狙い。 エクストリームーD 株式会社 (本社:東京都品川区 代表取締役 柴田直樹、以下、エクストリームーD) は、自社開発のベアメタル(物理サーバーによる)スーパーコンピューターシェアリングサービスXTREME-Stargate(TM)を用いた提案が、理化学研究所(理研)が
IT Leaders トップ > テクノロジー一覧 > サーバー > 事例ニュース > 名古屋大学情報基盤センター、「富岳」ベースのスパコン「PRIMEHPC FX1000」を2304台導入 サーバー サーバー記事一覧へ [事例ニュース] 名古屋大学情報基盤センター、「富岳」ベースのスパコン「PRIMEHPC FX1000」を2304台導入 2020年2月3日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部) リスト 名古屋大学情報基盤センターは、次期スーパーコンピュータシステムを富士通に発注した。富士通が理化学研究所と共同開発しているスーパーコンピュータ「富岳」の技術を活用した「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」を導入する。富士通によると、PRIMEHPC FX1000の導入事例は世界で初めて。2020年7月から稼働する。富士通が同年2月3日に発表し
最初のTop500の1位はCM-5 ドイツのマンハイム大学のHans Meuer教授とErick Strohmaier氏は、1980年代中頃からスーパーコンピュータ(スパコン)の設置状況を調査して一覧表を作っていた。一方、Jack Dongarra氏らは、スーパーコンピュータの性能を測るというプロジェクトを始めていた。 この2つの努力を合流させ、スーパーコンピュータの性能を測定して、スーパーコンピュータのリストを作ろうということになり、Top500が誕生した。Top500では、スーパーコンピュータを設置したコンピュータセンターが測定を行い、スーパーコンピュータの諸元と測定された性能などをTop500の委員会に提出する。 Top500の委員会は、測定結果に異状がなく測定値が信用できる場合は、正しい測定が行われているとみなし、提出された測定結果の上位500システムをリストとして公表する。 なお
HPC(High Performance Computing)の分野では計算ノード間の通信を担うインタコネクトの重要性が増している。HPCの高性能化から、接続する計算ノードの数が増えてきており、それに伴い通信遅延の低減が重要になってきている。 SC19においてInfiniBandを使うIn Networkコンピューティングについて発表するMellanoxのGilad Shainer氏 スパコンインタコネクトの定番、MellanoxのInfiniBand MellanoxのInfiniBandはスパコンのインタコネクトの定番となっており、Top500 1位のOak Ridge国立研究所のSummit、2位のLawrence Livermore国立研究所のSierra、3位の中国の無錫スパコンセンターの神威・太湖之光、5位のTexas Advanced Computing CenterのFro
富士通は12月2日、スーパーコンピュータ(スパコン)やメインフレームの生産を担当する富士通ITプロダクツ(FJIT)にて、日本の次世代スーパーコンピュータ「富岳」の出荷セレモニーを開催。設置場所である兵庫県神戸市の理化学研究所(理研) 計算科学研究センターへの「富岳」の出荷、設置、調整を開始した。 出荷セレモニーで執り行われたテープカットの様子。左から富士通ITプロダクツ代表取締役社長の加藤真一氏、石川県知事の谷本正憲氏、文部科学省 研究振興局 参事官の橋爪淳氏、理化学研究所 計算科学研究センター プロジェクトリーダーの石川裕氏、富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏、富士通ITプロダクツ 労組長の岩崎均氏 富岳はArmv8.2-A、SVEを搭載したCPUコアと、高速ネットワーク「TofuインターコネクトD」、HBM2、PCIeコントローラを1チップ化した「A64FX」を採用するスパコン。1チ
量子コンピュータの「ある計算でスパコン超え」 4年前の「PCより1億倍速い量子コンピュータ」との違いは?(1/2 ページ) 米Googleが10月23日(現地時間)に発表した、「量子超越性の実証」。既存のスパコンでは計算に約1万年かかるような、ある特殊な問題を、Googleの量子コンピュータでは3分20秒で解けることを示したといいます。 一方で、量子コンピュータの製造でGoogleと競争する米IBMは「その問題はスパコンでも約2.5日で解ける」と反論するなど、今回の発表が量子超越性を本当に実証できているのかどうかは議論もあります。 ところで、Googleは4年前にも同じような発表をしていました。2015年8月に米航空宇宙局(NASA)と共に発表した、「量子コンピュータがシングルコアコンピュータより1億倍高速に計算できた」というニュースです。 4年前の発表と今回の発表は何が違うのでしょうか?
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