1930年代、遺伝学研究のパイオニアであるJ. B. S. Haldaneは、血友病の家族歴を持つ家系に、ある特有の遺伝パターンがあることに気が付いた。血液凝固障害の原因となるこの変異は、母親からよりも、父親から娘に伝えられるX染色体の中に多く現れる傾向がみられたのだ。そこで彼は、子どもには母親よりも父親から多くの変異が伝えられる、という仮説を提唱した1。しかしHaldaneは、「この仮説が証明されるか、あるいは反証されるかは、何年も経たないとわからないだろう」とも認めていた。 その時がついに来た。多数のアイスランド人家系の全ゲノム配列解読から、Haldaneの正しさを示す証拠が得られたのだ。そのうえ、Natureに発表された研究で、男性が子どもを持つ年齢が、子に伝わる変異の数を決定することが明らかになった2。30代、40代と父親の年齢が上がるにつれて、その子どもが、自閉症や統合失調症など